「生娘シャブ漬け」等で吉野家常務は解雇に(公式ホームページより)
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 原告側とベローチェ側では何度も団体交渉がなされた。そこで出たのが前出のアルバイトに対する「鮮度」だ。“うちの客には、サラリーマンが仕事の合間に利用する人が多いので、そういう人のニーズでもあります”という人事部長の発言から、この鮮度という言葉が、とかく女性に向けられたものであることがわかるだろう。

“鮮度が落ちる”発言は企業の本音か

「“鮮度が落ちる”という趣旨の発言は、ベローチェ側の“本音”としか考えようがありませんでした。原告の女性は、“大好きなお店だから働き続けてきました。なのに、辞めさせる理由として『鮮度』という言葉を使って、魚や野菜のようにモノ扱いされ、人としての価値まで奪われました……と涙ながらに話しました。

 また、“ただ4年で人を使い捨てにするだけではなく、女性をモノ扱いし、年齢を重ねた女は、必要ないと言われたことが、私に裁判を決意させる決め手となりました”とも語っています」

 しかし、こちらの裁判は一審では会社側の主張を認め、女性の主張は退けられた。

「東京地裁は、“鮮度”発言について、“相当性を欠くきらいはあるとはするものの、交渉の際の一部の言動をとらえて不法行為の成否を判断すべきではない、人格を傷つける意図があったことを認めるに足りる証拠がない”などとして、違法な発言とまでは評価できないと不法行為責任を否定しました。あのような発言は、文脈や経緯はどうであれ、原告の人格や存在そのものを侮蔑するものであり、法的に違法とまでは評価できないとの判断は、著しく公平さを欠く判断と言わざるをえませんでした」

 女性は控訴。控訴審での2回の口頭弁論期日を経て、結審がなされた。その後の和解協議の場で高裁の裁判官は次のように話したという。

「原審(編集部注・その裁判の1つ前の段階で訴訟を審理した裁判)が労契法19条2号該当性を否定したことには問題があると考えている」

 そして、高裁の裁判官から和解の提案がなされ、その提案を基にした和解が’16年に成立した。ベローチェ側は女性に解決金を支払う形となった。

「ベローチェ側による女性に対する一定の解決金の支払いは、雇い止めおよび鮮度発言について会社が責任を認めたも同然であり、また、原告となった女性も“尊厳が回復されたと感じている。勝利に近い和解だった”と話しており、勝利的和解といえるものだと考えております」

 これら一連の裁判は’16年に和解成立となったが、ベローチェのアルバイトの勤務形態は変わっていないという声が聞こえてきた。

 そこでベローチェの運営会社に人事部長による当時の“鮮度”発言について会社としての見解、またアルバイトの契約について問い合わせると、以下の返答があった。

「当該の件で訴訟があったことは事実です。すでに当事者間での和解が成立しており、和解内容については守秘義務を課せられているため、回答は致しかねます。現在は、6か月有期契約となっており、契約更新の上限は設けておりません」

 アルバイトを利益のために簡単に取り替えられる“モノ”として扱い、またそこで性差別を行う……。大手チェーンとしてどれだけ店舗を拡大しようが、そこに人の心はあるのか……。