学校には「代理人」としてママ友が対応した。男児が精神的に不安定ということ、人と会うと悪化する、専門のカウンセラーをつけている……。

 ママ友は言葉巧みに学校を黙らせ、面会を希望する担任を遠ざけた。が、あるとき、担任がベランダ越しに男児の姿を確認できたことがあった。ところが、確認できたことで学校側はかえってママ友の話を信用してしまった。

 ママ友はもともと面倒見のいいお母さんで通っていた。自分の子どもがやきもちを焼くほど、困っている母子の世話をしていた。このお母さんになら、任せておいても大丈夫だろう、そんな空気が学校にもあったようだ。

 そうはいっても学校としては定期的に確認をしたがった。ママ友はそのたびに、「もうすぐ通えるようになる」などと言ってはぐらかした。しかしその頃、男児の環境は著しく悪化していたのだ。

 実際の男児は、食事をきちんと食べないという理由でおかゆから流動食にさせられ、回数は1日1回になっていた。そして、平成14年8月、衰弱からの急性肺水腫で亡くなった。

裁判で明らかになったこと

 裁判では母親が主張していた男児の複数回の家出、自傷行為、異食、食事拒否についても審理された。

 すべての行為は男児の問題行動を直すためのものだと母親は信じて疑っていなかったが、一つ一つを見ていくと実は男児にそんな問題行動は起きていなかったことが分かった。

 実際に起きていた家出も、近くで暮らす祖父母のもとに逃げ込んでいたのだ。祖父母は孫の様子がおかしいことから母親に話を聞こうとしたが、そのときもママ友が涙ながらに「私が必ず立ち直らせますから!」と話し、祖父母は黙るしかなかったという。

 しかし祖父母からの疑いの視線を感じたママ友は、すぐさま家の電話を取り外し、祖父母に預けていたマンションの合鍵も取り戻させた。そこから2年、祖父母は男児が死亡するまで、男児に会うことができなかった。

 自傷行為については、ママ友の助言で学校に通えなくなって以降のことだった。となれば、事態の深刻さを感じた男児が、悲観してとった行動ともいえる。石鹸を食べたなどという話はもはや事実であるかどうかが疑わしかった。

 男児はそれまで、学校でも家でも何ら問題のない子どもだった。学校側もそれを証言し、男児がおかしくなったから閉じ込めたのではなく、閉じ込めたがゆえに起きた行動だったと主張した。

 大阪地方裁判所は、主導的な立場にいたとしてママ友に懲役9年、母親には懲役8年を言い渡した。