歌詞に隠された思い

 この“思い”は歌詞にも現れていると、スージーさんは解説する。

「『夕方 HOLD ON ME』('84年)は“夕方”と“You've gotta”で韻を踏んでいます。同じアルバムに入っている『JAPANEGGAE』('84年)では英語の発音を無理やり日本語にして、“I could never”を“愛苦ねば”と置き換えたり。“初期サザン”のこういった実験的な試みが面白いんです。これも桑田さんの英語に対する妬み、憧れの現れなのかも。

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 洋楽に対する思いが強いからこそ、歌い方も英語っぽく発音するじゃないですか。それこそサザンのデビュー当時、日本語じゃないなんて叩かれたりしましたけど、変だと言われた日本語はベースに洋楽があったからなんです。それが今や、日本ロックの“普通”になっていますけどね」

 ここまでアンケートについて解説してきたスージーさんの、推しの曲は何なのだろうか。

「1曲あげて、と言われたら僕は『メロディ(Melody)』('85年)ですね。個人的に自分の浪人時代という屈折した時代に聴いていたということが理由なのですが(笑)。この曲に続くのは……『ピースとハイライト』('13年)かな。歌詞については炎上したりしましたけど、ああいうあっけらかんとしたメッセージソングが大好きなんです。

 ある意味、桑田佳祐の真骨頂という感じがします。あとはそのときの気分などによっていろいろと変わりますね。あ、『勝手にシンドバッド』は殿堂入りということにしてください(笑)」

 デビューして40年以上、日本の音楽シーンのトップを走り続けているサザン。その魅力についてスージーさんは、

「国民的バンドでい続けられる理由は、桑田さん自身の中に内包されている、大衆の前で道化として振る舞う自分が好きということかなと。僕はこれが彼の“業”だと思っているんですけど。マニアックなことでなく、1億人の前で全員を喜ばせたいという気持ちが強いのでしょう。

 結果、シングル曲はカラオケで歌えば万人受けする、国民的サザンというものを形作っているのが大きいと思います。アンケートの、カラオケで歌う曲なんて、まさにこのことを反映した結果になっていますよね

 そして、アルバムを聴くと──。

「そこにエロとか、コミックソングとかメッセージソングといった違うタイプの曲がそれぞれのアルバムに山ほどあります。2段構造になっているんですよ。この両輪の回し方が実にうまいんです。サザンが売れ続けているのは、桑田さんの大衆性と、狂気といったふたつの輪がバランスよく回っているから。

 とっつきやすいシングル曲から入った先に、マニアックな世界が広がっている。そこからが“サザン沼”の始まりです(笑)」

 今年で66歳になった桑田。まさに“円熟期”に入った彼は、これからどんな音楽でファンを楽しませ、また喜ばせてくれるのだろうか。その一挙一動から目が離せない!

PROFILE●スージー鈴木(すーじーすずき)●音楽評論家、小説家、野球評論家。『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『恋するラジオ』(ブックマン社)など著書多数。近著に桑田佳祐の歌詞の世界に迫った『桑田佳祐論』(新潮新書)がある。

(取材・文/蒔田 稔)