年金の金額と健康状態でも差が

●親を扶養に入れたら得か損か?(モデルケース)

【CASE1】シングルマザーのAさん。娘1人(20歳)
扶養者(Aさん)55歳/会社員/年収・500万円/健康状況・良好
被扶養者(母)85歳/無職/無収入・無年金/健康状況・良好/別居

【CASE2】専業主婦のBさん。息子2人(22歳と20歳)
扶養者(夫)55歳/会社員/年収・700万円/健康状況・良好
妻(Bさん)50歳/専業主婦/無収入/健康状況・不調
被扶養者(母)75歳/パート/年金収入38万円+パート収入50万円/健康状況・良好/同居

【CASE3】寡婦のCさん。子どもなし
扶養者(Cさん)50歳/パート/年収・350万円/健康状況・良好
被扶養者(両親)80歳・75歳/無職/年金収入220万円/健康状況・父の体調不良/同居

「例えばCASE1のAさんは税法上の扶養は得。しかし健康保険の扶養に入れることはできません。健康保険で扶養に入れるのは75歳までだからです」

 75歳以上は後期高齢者医療保険に加入するからだ。Aさんの母が73歳ならば健康保険上も得。医療費も低いし、介護保険も使っていない。

「Bさんの母親は、税制上、夫の被扶養者に入れると得です。健康保険上は扶養に入れませんが、もし、73歳だったなら健康保険上も得です」

 Cさんの場合なら、両親の年金収入220万円の内訳によって変わるそう。

「例えば、父150万円、母70万円と仮定すると、2人とも扶養控除の適用となるので、Cさんの税金は安くなります。健康保険上、2人とも扶養に入ることはできません。もし75歳未満であれば、父の体調不良ということで、扶養に入ると医療費が高くなる可能性があるので扶養に入ると損といえます」

 ざっくりいえば、親が75歳以上の後期高齢者なら、税法上の得しかない。健康保険上の扶養でも得をしたければ、親の健康状態が見極めのポイントだ。また、健康保険の扶養に入れるには、親の収入要件も確認が必要だ。

「例えば、母親だけが収入要件を満たした場合も、多くの場合は父母の夫婦として生計が維持されているかどうかなどが判断されます。加入している健康保険によってその条件は変わります。協会けんぽでは、親と別居の場合は、“年収が130万円未満で、かつ被保険者からの仕送り(援助)額より少ない”が条件。また“父より子のほうが生計維持力があると判断された場合”に扶養に入ることができる健康保険もあります」

 健康保険組合によって扶養親族が受けられるサービスも異なる。制度面でどのようなサービスがあるか、事前に確認しておくことも必要だ。

 親の所得や年齢、健康状態に注意し、賢く節税を!

●教えてくれた人●
あいだあい
 名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。ミス東スポ2019グランプリ。株式、FXなどの投資家。ファイナンシャルプランナー、プライベートバンカー資格者。YouTube『あいだあいのマネーちゃんねる』も好評配信中。

福一由紀
 ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。「All Aboutガイド」。関西発の女性FP集団『マネーラボ関西』を設立。セミナー、執筆、各種メディアへの企画監修、コンサルティングなどを行う。

取材・文/ガンガーラ田津美