マイクロチップで責任の所在が明らかに

 愛玩動物飼養管理士1級の資格を持ち、「キャットシッターmedel」を運営する今村かなえさんが語る。

「厳罰化につなげるためにも、マイクロチップ装着義務化は役立つと思います。その動物に対しての責任の所在が明確に登録されるので、遺棄、保健所への持ち込みなどの際に調べがつきます。私はそうした意味でもやるべきだと思います」

 また、こうした改正についていけない古い体質の業者や、動物を犠牲にしてきた昔ながらのブリーダーなどが淘汰される機会になる、とも。

「改正では、1頭当たりのスペースやスタッフの数などといった飼育環境も厳格化されました。本来なら、廃業支援をしてでも虐待まがいの業者を淘汰していくのも、環境省のやるべきことだと思っています」(今村さん)

 お隣の韓国では、政府や保護団体が食肉用ののブリーダーのために廃業支援を行うといったケースもあるという。今村さんは、単に厳罰化するのではなく、工夫をしながらよい環境をつくるための取り組みが必要だと訴える。その一方で、

迷子などによる悲しい別れを防ぎたい─という当たり前の流れから義務化となればよかったのですが、そうではなく安易な生体販売に歯止めをかけようということが理由となると、複雑な気持ちにもなります」(今村さん)

 と胸中を明かす。

 たしかに、マイクロチップに焦点が当たることで、証明書さえ手に入れば、個体から無理やりマイクロチップを取り出すなどの新たな問題も噴出するかもしれない。環境省の舵取りが問われる。

 それでもマイクロチップに、今村さんは期待を寄せる。

「私は難病を患っているを飼っているのですが、もしこの子が迷子になって、仮に優しい誰かに飼われたとしても、難病とは気がついてもらえず重篤な状態になる可能性もあります。そうしたことを考えると、マイクロチップは有用だと思います」

 ペットと同じ数だけ、飼い主とペットの間にはドラマがある。マイクロチップを装着する、しないだけの話で終わらせずに、私たちは“もっと先”まで寄り添って考えていかなければならない。

今回お伺いした専門家

パンク町田さん
NPO法人生物行動進化研究センター理事長。NPO法人日本社会福祉愛犬協会(KCJ)理事。野生動物の生態を探るため世界中、探索に行った経験を持ち、3000種以上の飼育技術と治療方法を習得している。

かなつ久美さん
1990年、角川書店から漫画家デビュー。趣味は美容と保護犬ボランティア。

今村かなえさん
キャットシッターmedel代表。愛玩動物飼養管理士1級。ペットケアアドバイザー。4匹の猫を飼育しつつ、野良猫を地域猫化して近所の人と大切にお世話中。

<取材・文/我妻弘崇>