リズムネタ不遇の時代に

 そんな視聴者の変化を受け、ネタ見せ(オーディション)にも変化が起きている。

『爆笑レッドカーペット』が放送されていた'10年ごろまでは、多くのネタ番組のネタ見せは1分が主流でした。最近は2~3分のネタを見せるオーディションが多いので、キャラ芸や8・6秒バズーカーのようなリズムネタで笑わせ続けるのは厳しいんです。それならしっかり作り込んだネタをやったほうが、ネタ番組でも賞レースでも結果を出せる可能性が高いですね」(前出・中堅芸人)

『おもしろ荘へいらっしゃい!』(日本テレビ系)など、若手の登竜門的な番組にも変化が出ているという。

「'17年に『おもしろ荘』でブルゾンちえみさんが注目を集めましたが、'19年は後に『M-1』の決勝にも進んだぺこぱが優勝するなど、キャラクターにプラスアルファがないと、若手発掘番組でもチャンスをつかみにくくなっていますね」(前出・テレビ誌編集者)

キャリアウーマンのあるあるネタでブレイクした、ブルゾンちえみ
キャリアウーマンのあるあるネタでブレイクした、ブルゾンちえみ
【一覧表】見やすい!一発屋芸人一覧、時代の移ろいとともに現れて…

 キャラクター芸人も、最近は少し事情が違うようだ。

「『R-1ぐらんぷり』で優勝したハリウッドザコシショウや、ユーチューバー芸人のフワちゃんなど、現在もインパクトの強いキャラクターを武器にブレイクする芸人は定期的に出ています。一見キャラだけに見えるフワちゃんですが、“裏回し”と呼ばれるMCのサポート的立場でトークを回せるのが強み。ザコシショウも錦鯉に“バカを前面に押し出せ”とアドバイスをして『M-1』優勝に導いたように、独自のお笑い理論を持っているため、長く活躍ができています。一発屋が出なくなったというよりは、実力が備わっていなければ一発も当てられなくなったというのが正しいのかもしれません」(大塚さん)

 コロナ収束後には再び一発屋が誕生する?

「YouTubeやSNSでは、今でも若い世代でバズる流行語や一発ギャグのようなものは誕生しています。しかし、コロナ禍により文化祭や忘年会など一般の方がまねする機会が減ったことで、ブームが局地的なもので終わるようになってしまい、幅広い世代に認知される一発屋スターや流行語が生まれにくくなっています。コロナが収束すれば、再び大ブームを起こすスターは現れると思いますよ」(衣輪さん)

 その年や時代を象徴する一発屋たち。世代を問わずまねできるスターたちが再び出てくることを期待したい!

主な一発屋芸人たち
主な一発屋芸人たち

衣輪晋一  メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト『ORICON NEWS』など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中