そんな矢先、ローカルアイドル時代の友人が『ライブ配信』を始めたことを知る。ライブ配信とは、映像と音声をリアルタイムで配信すること。視聴者から“投げ銭”などの応援金をもらうことで報酬も得られる。

 一度は諦めたアイドルのような活動がライブ配信ならできるかもしれない――。当時の体重は80キロ。顔や身体がカメラの加工機能で隠せることも魅力だった。

アプリの小顔加工は常に100%設定、細くしたうえで、さらにカメラは上方向から撮影していました。当時は自分が太ってることを頭ではわかっていても、受け入れられなくて。バレたくなかった。断食もしたけど、リバウンドを繰り返してました」

加工しないほうが個性出ていいよ!

「芸能人で好きなタイプは河村隆一さん♪王子様みたいな顔が大好き」と言って照れるえみっくすさん
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 ところが、ある日、アプリ上のトラブルで加工設定ができなくなってしまう。必要に迫られ、そのまま配信をスタートすることに……。

「加工した自分の顔のほうが見慣れていたので、画面にうつる自分がものすごく太っていて、ショックでした。また誹謗中傷されるのか、って怖かったですね。でも、いろんな視聴者に『こっちのほうが個性出ていいよ!』って言われて。意外な反応でした。このままでいいの? って。

 それまでは、アイドルぶって面白くない雑談を配信して、人気も全然なかった。でも、加工無しにすると、少し開き直ったキャラにもなれて、トークも盛り上がったんです」

 その日から、少しずつ加工を薄くしていった。突然、加工無しにする勇気が持てなかったからだ。

 えみっくすさんの体型を先に受け入れたのは、画面越しの視聴者たち。その声に励まされながら、加工を減らし、自分の心を慣らす期間が必要だった。

「めっちゃ太ってるけど、顔は橋本環奈だよ!似てる!」

 視聴者の一人がそう言い始めると、配信は大盛り上がり。

 コンタクトレンズを茶色に変え、ナチュラルメイクを意識した。美少女の代名詞であるタレントに似せることで自信もわいた。いつしか、「デブ業界の橋本環奈です♪」と名乗るようになっていた。

デブ!と言われると1週間頭から離れないほど落ち込んだのに、今は街中で『デブ!』と揶揄されても、『それを職業にして食べてますから』としか思わなくなりました」