小学生「人間より賢い生き物はいるの?」

 小学2年生の男の子から「人間より賢い生き物」について聞かれたときも、科学的な回答にとどまらなかった。

「普通に考えれば人間より賢い生き物はいません。オンラインでやりとりができて、宇宙にも行けるのは人間だけ。そうして科学的な面では進歩したけれど、ウクライナで起きているように戦争が絶えたことはなく、地球温暖化を引き起こしたのも人間です。そう考えると、必ずしも人間は賢いわけではない。戦争をやめてみんなが幸せに生きていける知恵や可能性を持っているのだから、若い君たちにはぜひ、その方向に進んでもらいたいとお話ししました」

 3つ目に挙げたのは「犬にも右利き、左利きはありますか?」という質問。

 これに成島先生は「考え込んでしまった」と打ち明ける。

「犬を飼っている小学校高学年の女の子が、“うちの犬は必ず左側から足を出す。だから左利きではないかと思った”と言うんです。女の子自身が左利きだそうで“動物にも利き手はあるのでしょうか”と質問をされました。

 人間は二足歩行ですから手はフリーの状態、つまり移動手段ではないわけです。そんな人間の利き手や利き足を、動物に当てはめて考えていいものだろうか。そうした疑問があり、NHKの担当者に回答できませんと伝えました。もう1人の回答者、(元・旭山動物園園長の)小菅正夫先生も答えられないと言われていました」

 すると、担当者は大いににおもしろがった。“動物のプロ”がそろって頭を抱えたからだ。

「そこで全国調査をすることになりました。視聴者に呼びかけて、動物の利き手について報告してもらったんです。すると、人間のように右利きが多いといった傾向はみられませんでしたが、個体によっては右前足をよく使うとか、左前足を頻繁に使うケースもあることがわかりました」

 犬を対象にしたものではないが、ニホンザルの利き手を調べた文献はすでに存在する。これは小学生にして、プロの研究者と同じような問いを立てられたということ。

「子どもはいろいろな質問をぶつけてきます。大人が忘れてしまった知識欲や好奇心が旺盛なときに、その芽を摘まないことが大切。親子で一緒に図鑑を見たり、動物園や図書館に連れて行ったりすることで、子どもは自分で調べられるようになりますから」

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編集部がセレクト!記憶に残る質問 ベスト3

Q. どうしてパンツははかないといけないのですか?(2017年8月30日放送)

Q. 人はどうして生まれてきて死んでいくのですか?(2018年8月30日放送)

Q. 外国のネコと日本のネコはお話ができますか?(2022年7月10日放送)

お話を聞いたのは…元・井の頭自然文化園園長 獣医師

成島悦雄先生
成島悦雄先生

 1949年生まれ、栃木県出身。上野動物園、多摩動物公園の動物病院での勤務を経て、井の頭自然文化園園長を務めた。動物図鑑などの監修、著書も多数。『子ども科学電話相談』には「動物の先生」として2013年から出演中