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ー 示談に持ち込む強力な弁護士

「男性4人が女性1人を襲うという悪質極まりない事件。容疑者らには必ず刑罰を受けてほしいのですが……」

 そう言い淀むのは、元大阪府警刑事の犯罪ジャーナリスト・中島正純氏。

 9月8日、酒に酔った女子大生に集団で性的暴行を加えたとして、京都府警は同志社大学のアメリカンフットボール部に所属する片井裕貴容疑者(21)、山田悠護容疑者(21)、濱田健容疑者(22)、牧野稜容疑者(21)の4人を準強制性交の疑いで逮捕した。

 容疑者らは行為自体を認めつつも「女性と認識の違いがあったかもしれない」などと供述しているというが、

「犯行現場となった片井容疑者宅の付近にある防犯カメラに、泥酔する被害女性を4人が抱きかかえて部屋に連れ込む様子が映っていた。さらには、1時間にわたって4人がかわるがわる性的暴行を加えた様子を撮影した容疑者のスマートフォンも押収されている」(捜査関係者)

   揺るぎない証拠がそろっていて、どう考えても“認識の違い”などでは言い逃れできるとは思えないが……。

「性犯罪は不起訴、もしくは起訴猶予処分になるケースが多いんです」

 と、冒頭の中島氏は語気を強める。一体なぜなのか。

 逮捕後、容疑者らは送検されると検察官によって勾留期間が満了するまでの間に、起訴するかどうかを判断されるのだが、

「起訴されるまでの最大20日間のうちに、容疑者の弁護士はなんとか示談に持ち込もうと被害女性側にアプローチするでしょう」(中島氏、以下同)

“意地悪”な交渉をしてくる弁護士は多いという。

示談に持ち込む強力な弁護士

「“本当に合意はなかったのか”“容疑者らにどんな行為をされたのか”。性犯罪は裁判で事件の詳細について根掘り葉掘り聞かれます。弁護士はそこを突いてきて、被害女性とその家族に“セカンドレイプに耐えられるのか”と投げかけ、追い込んでくる。

  今回の容疑者らは名門大学のご子息。示談に持ち込むのを得意とする強力な弁護士をつけることでしょう」

“お金を取れるだけ取りましょう“と被害者側に寄り添うフリをする弁護士もいるという。

 今回のように、たとえ決定的証拠がそろっていて必ず立件できる事件でも、被害女性が示談を受け入れて被害届けを取り下げてしまったら、容疑者を法で裁くことはできなくなる。

「被害女性の気持ちを考えると容易くは言えませんが……私は彼女に強い処罰意識を持ってほしいと思っています」

 容疑者らが口をそろえて“認識の違い”と供述したのも、弁護士の入れ知恵なのか。容疑者らは刑事事件で裁かれ、犯した罪ときちんと向き合ってほしい。