相手を思いやる言動はいいとして、靴をそろえるとか箸の扱いがちゃんとしているとかそんな当たり前のことが描写されているからとニュース記事で取り上げるのも正直どうかと思うが、家族で見ていて小さな子もいたらその子がそうしようと心がける教育の一助にはなる。

 そこをおろそかにしないほうが確かにいいだろう。国民的番組としては最低限の礼儀作法を登場人物の行動に取り入れてほしいと国民は期待しているのだ(かつエンタメとしてのおもしろさが必要)。

ちむどんどん」の場合、国民の期待をことごとく無視していたため、不満につながった。もう蒸し返すのもなんだが、一応書いておくと――

その1:清々しい自然の風景はあったが途中から空の見えない息苦しい都会に
その2:自分本意な家族たち
その3:主人公が自信過剰
その4:お父さんは働き者だったが長男が働かず博打や詐欺行為を行う
その5:お母さんが放任主義する
その6:お友達や隣人が主人公家族に極度に親切すぎる

「ちむどんどん」に視聴者が困惑を覚えたワケ

ちむどんどん」は沖縄やんばるに生まれた主人公が父を早くに亡くして母と4人兄妹で肩寄せ合って生きてきて、沖縄が本土に復帰した年に上京し、料理人修業を経て、地元で地元の食材を使ったレストランを開店する。中国、アメリカ、日本と多くの文化が混ざった地域性は東京中心の価値観とは違うためなのか、登場人物たちの言動に戸惑う視聴者を多く生んだ。

 とりわけ、長男がいつまでたっても借金を繰り返し、それをたしなめる者がいなく、家族が肩代わりし続けることや、恋愛に関する倫理観のズレに意見する視聴者が多かった。ただ、それは物語の描き方によっては社会問題や哲学的思考につながる題材になり得るものではあった。

 賛否両論あっていいものではある。沖縄の歴史と現在も複雑な背景があるので言及できないのだとしても仕方ない。そのなかで、どうにもかばいようがなかったのが、料理である。料理人を目指している主人公のリアリティーが薄すぎた。朝ドラが配信もされるようになって視聴者の層が広がったとはいえ、依然として主婦層は多く見ている。