ワイドショーは苛酷な世界

 そんな彼ならではの漫才が28歳のとき『GAHAHAキング 爆笑王決定戦』(テレビ朝日系)で披露したネタだ。死ぬのはイヤだから人生が終わると笑うことにすればいい、と言い出し、時代劇では斬られた10人くらいが大笑いしていたり、という妄想を展開。核戦争が起きても、人類滅亡ではなく「人類大爆笑」になるというオチがつけられる。

 シニカルななかに、笑いへの希望も感じられる漫才で、爆笑問題はこれで10週勝ち抜きを果たした。ただ、ワイドショーは漫才を作るようにはいかない。もっと現実的な世界だ。それゆえ、松本人志は政治家の建前と本音といった使い分けも容認しつつちゃかすが、太田はそこをよしとせず、ただそうとするのだ。

 また、彼は言動とは裏腹に、それほどふてぶてしくはない。昔、同じ雑誌で連載していたころ、担当が同じ編集者で「爆笑問題さんは苦情が出ることをすごく心配するんです」と話してくれたことがある。

 実際、今回のバッシングが本格化したあとの9日に放送された『サンデー・ジャポン』(TBS系)では、借りてきた猫のようにおとなしく、それもネットニュースになった。

 その点、ひろゆきなどは何があってもふてぶてしさを崩さず、現実をかき回すことに徹している。ワイドショーに向いているのは本来こういう人だろう。

 太田の持ち味は、童話「裸の王様」の子どものようなツッコミ。ただ、ひろゆきや松本にはそれに加えて、ケンカのうまさがある。そうでないとやっていけないほど、ネット時代のワイドショーはゆるそうに見えても苛酷なのだ。

宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。