11月23日に日本がドイツに歴史的勝利を挙げ、大きな盛り上がりを見せているサッカーワールドカップ。今大会は、IT企業のサイバーエージェントとテレビ朝日が出資して運営するインターネットテレビの『ABEMA』が全64試合を中継する。

「ワールドカップはこれまでNHKと民放キー局が共同で放映権を獲得していましたが、今大会は放映権料が高騰。キー局の足並みがそろわず、交渉が暗礁に乗り上げ、日本で中継されないのではないかという話もありました。最終的に地上波ではNHKとテレビ朝日、フジテレビが放送し、『ABEMA』はテレビ朝日と連合という形で放映権を獲得しました。全体で180億円とも言われている放映権料のうち、大半の金額をABEMAが出したようです」(スポーツ紙記者)

 サイバーエージェントとAbemaTVの社長を務める藤田晋氏は、

《アベマとしては過去最大の投資となります》

 と、自身のTwitterに投稿。日本では初めてとなる全試合無料生中継に踏み切り、早くも結果が出ているようだ。

「11月22日に放送した、アルゼンチン対サウジアラビア戦でABEMA史上過去最高の視聴数を記録しましたが、同23日の日本がドイツに勝利した試合ではさらに大きく上回り、更新しました。本田圭佑さんの解説も話題となり、累計接続者数は1300万人を超えました」(前出・スポーツ紙記者)

 とはいえ、キー局が尻込みするような高額な料金を、なぜABEMAが支払うことができたのか。実はこれには、ABEMAに出資しているサイバーエージェントの業績が大きく関係していた。

右肩上がりのネット広告事業

 ITジャーナリストの西田宗千佳さんに話を聞くと、

「子会社のひとつ、Cygamesが制作したスマホゲーム『ウマ娘』の大ヒットは大きな要因でしょう」

 ウマ娘は2021年2月にリリースされ、大ブームに。サイバーエージェントの同年9年月期の決算では、売上高6664億円、営業利益1043億円と過去最高の業績を記録した。

「ただ、ゲームはずっとヒットが続くかどうか予測はできないですし、爆発的なヒットが生まれるような状況を想定して事業をしていたわけではありません。根本にあるのは、主たる事業であるインターネット広告事業がずっと右肩上がりで伸びているということです。極論ですが、広告代理店といえば電通や博報堂があって、ほかの会社がある。それらが総合メディアを扱うのに対して、インターネット専門の広告事業社としてサイバーエージェントが存在感を高めているのが大きいです」(西田さん、以下同)

 放映権を獲得できたのは、サイバーエージェントの業績以外にも、開局して7年目、今年9月の時点で8300万ダウンロードを突破したABEMAの成長もあった。

ABEMAは業績こそ赤字になっていますが、視聴者数は増え、無料で見るメディアとして定着してきました。影響力のあるしっかりとしたメディアだと印象付けたい、もう少し名前を売る機会はないかと考えていたときに、ワールドカップの放映権の話がきて、取得したというような流れだと思います」

 業績好調に加えて、“新しい未来のテレビ”を掲げるABEMAの次なる狙いが合致して、ワールドカップという世界的なイベントを中継できることになった。

 コアなサッカーファンだけでなく、ライト層まで取り込むことはできるか。