目次
Page 1
ー 「離婚する」という言葉を信じて4年……
Page 2
ー 結婚を切り出したら逆ギレ
Page 3
ー 不倫相手を切らずに婚活したものの

「学生を終えて社会に出たら、次は結婚」という図式は、昭和の時代にすでに消滅しました。今や結婚は、選択の時代。したいと思った人たちがする。とはいえ、したい結婚が手に入らない人たちもいます。それはどういう人たちだと思いますか?

 仲人をしながら婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにしている婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、結婚したいのに結婚できない人たちの話です。

「離婚する」という言葉を信じて4年……

 先日、都内の美容メーカーに勤めるえみさん(31歳、仮名)が、入会面談にやってきました。

「27歳から4年間、不倫をしていました。ただ私と出会ったときには、すでに奥さんとは別居をしていたので、そのまま離婚をするんじゃないかと思っていたんです。でも、夫婦って、そんな簡単に離婚しないんですね」

 お付き合いしていたしんやさん(38歳、仮名)は、イベントを主催する会社に勤めており、出会いはとあるイベントでのことでした。来場者にプレゼントする商品をえみさんの会社が協賛提供し、それを配るスタッフとしてえみさんが参加しました。イベント会場で、まず2人は名詞交換。終わってからの打ち上げて意気投合して、LINE交換をしました。

「私が推してるバンドのメンバーのひとりに似ていて、もろタイプでした」

 仕事を終えて帰宅すると、しんやさんからの早速のLINEが来ました。メッセージのやり取りもその夜6往復くらいし、翌々日会社終わりに食事に行く約束をしました。

「もうLINEのやり取りをしているときから、恋に落ちていたのだと思います」

 そして、食事に行き、えみさんはますますしんやさんのことを好きになってしまいました。ところが、2度目のデートのときに、「実は結婚している」ということを聞かされたのです。

「27年間生きてきて、一番好きになった人でした。結婚していることがわかっても、もう気持ちをゼロに戻すことはできなくなっていた。奥さんとは離婚を見据えて半年前から別居中だというし。奥さんは、会社の人間関係がうまくいかなくなってうつ状態になって退社。関西の実家に帰って療養しているとのことでした」

 相手は結婚しているものの、妻とは別居中。付き合うようになって半年後には、しんやさんのマンションの合鍵ももらい、普通の恋人同士のような付き合いをしていました。

「そんな関係のまま2年経ってしまって、私も29歳になった。30歳という年齢が見えてきて、“そろそろ結婚したいな”と思ったんです。でも、一向に離婚する気配がない。ただ、私もプライドがあって、『なんで離婚しないの?』と聞けないままに、時間だけが過ぎていきました」

 そして、30歳になってしまった。仲のいい友達の中には、チラホラ結婚する人たちも出てきました。

「もうヘンなプライドは捨てました。『私、もう30歳になったのだから結婚をしたい。なぜ離婚をしないの!』と詰め寄りました」

 すると、とんでもない事実がわかりました。妻がうつ病になったのは、会社での人間関係がよくなかったのも一因でしたが、一番大きな要因は、しんやさんの浮気だったのです。そのとき妻は妊娠初期でした。その浮気が発覚した直後に、流産。そして、うつ状態になり、会社を辞めて一旦、関西の実家に戻ったというのです。

 えみさんは、私に言いました。

「そこまで妻を追い込み、妻の両親からも酷く非難されていた。妻から離婚を言い出してくれるならできるが、彼からは負い目があって言い出せないようでした。彼が離婚できるかどうかは、奥さんの胸ひとつ。“いつかは、結婚できる”と思っていたのは私の独りよがりな考えでした」

 そして、えみさんから、しんやさんに別れを切り出しました。しんやさんは、「えみがいなくなる人生は、考えられない」と言って、おいおい泣いたそうです。

「泣いている彼を見て、私もつらくなりました。だけど、私ももう若くない。いつ結婚できるかわからない相手と付き合っていたら、出産が不可能な年齢になってしまうかもしれない。そうしたら、自分の人生をとても後悔するんじゃないかと思ったんです」

 そして、お互いに渡していた合鍵を戻し合って、えみさんは一人暮らしのアパートを引っ越し、婚活を始めることにしたのです。

「私、1年以内に結婚を決めたいです。今回学んだことは、結婚できる相手と出会わないと、結婚はできないという現実でした」