目次
Page 1
ー 防衛費の増額は「増税」で負担
Page 2
ー 憲法違反してまで増強するのに、軍事的には「周回遅れ」
Page 3
ー ウクライナのように、中国が台湾に、そして日本に侵攻するのか

 物価高が止まらない。調査会社『みずほリサーチ&テクノロジーズ』のリポートによると、2022年度の家計支出は前年比で年間9万6000円の増加。今年はさらに4万円も増える見込みだ。それに加えて上がらない賃金、減る一方の年金……。庶民の暮らしは厳しさが増すばかりで、安心・安全にはほど遠い。

防衛費の増額は「増税」で負担

 そうした中、岸田政権は昨年12月16日、外交・防衛政策の基本方針が記された3つの文書「安全保障関連3文書」(以下、安保3文書)を改定し、閣議決定した。

 安保3文書には'23年度から5年間の防衛費について、現行計画の1・5倍に当たる約43兆円に増額する内容が盛り込まれている。しかも5年目に当たる'27年度には4兆円が不足するため、このうち1兆円を増税でまかなうと表明している。

 これが「防衛増税」として批判を集めたのは周知のとおり。岸田文雄首相は「未来の世代に対する私たち世代の責任」と理解を求めるが、世論の反発は大きい。名古屋学院大学の飯島滋明教授(憲法学・平和学)も、こう批判する。

「生活困窮者が増え、非正規雇用の多い女性の自殺も問題になっています。こうした社会保障には“財源をどうするのか”という話になるのに、防衛費には“予算を増やして税金を充てます”と言い出す。国民の理解を得られるわけがありません。

 そのうえ岸田政権は'27年度から、従来はGDP(国民総生産)比1%程度だった防衛費を同2%に増やす方針です。日本はアメリカ、中国に次いで、世界3位の軍事大国となってしまいます

「防衛力」を超え「戦力」に拡充

安倍氏は首相退任前の’20年9月、敵基地攻撃能力を保有すべきとの談話を発表している
安倍氏は首相退任前の’20年9月、敵基地攻撃能力を保有すべきとの談話を発表している

 問題はそれだけではない。安保3文書では、「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有を明記している。日本が攻撃を受けていなくても、相手国が攻撃に着手したと判断できれば、日本から相手国に向けてミサイルを撃ち込むことを可能にするものだ。

「2015年に成立した安保法制では、“集団的自衛権の行使容認”と言って、日本と密接な関係にある国が攻撃を受けたとき、日本が直接攻撃を受けていなくても自衛隊は武力行使ができると認められました。

 ただし憲法9条は、外国を攻撃する戦力を持つことを禁じています。そのため歴代の政府は、外国領域を攻撃できる兵器を持たない方針をとってきました。

 ところが岸田政権はその方針を変えて、外国を攻撃できる兵器を持てるよう安保3文書の中に明記したのです」(飯島教授、以下同)

 これは「戦力」の保持を禁止した憲法9条に違反している。また、自衛のための必要最小限度の実力行使しか許されないという「専守防衛」からも逸脱する。