「何度もくり返される」不快要素

 映像の気持ち悪さだけでなく、その頻度も不快に感じている人が多数いた。

「何度もくり返されるというのも苦情が入る1つの要素です。震災時の『ACジャパン』のCMなどが代表的です。キャラクターを使っていて、最初はかわいいという好意的な意見もありましたが、あまりにも回数が多かった。『単純接触効果』といって、対象に感情がニュートラルな場合は接触する回数が多くなると好意度が高くなる理論があります。しかし、接触すればするほどその対象を好きになるのかというと決してそうではなく、人でも物でも映像でも、10回をピークにそれ以上となると好意度は増加しない、増加があっても緩やかとなるという研究があります。

 単純接触効果が有効なのは、“感情”が芽生える前とされています。要するにニュートラルな感情の場合は接触することによってその対象に好意を持つけれど、“気持ち悪い”・“怖い”というような嫌悪感を抱いてしまった場合は、どんどん悪いところに目が行くようになります

dodaXの“ドアップ”CMに出演する宇宙飛行士の野口聡一(公式YouTubeチャンネルより)
dodaXの“ドアップ”CMに出演する宇宙飛行士の野口聡一(公式YouTubeチャンネルより)
【写真】「まじで無理、不快すぎる」と話題のCM映像

 SNSなどを見るかぎり、多くの人が不快感を持ったようだった。『doda X』のCMの“意図”とは……。

「私自身、『doda X』のCMを見たときに、少し恐怖感を抱いたので、“苦情が入るかもしれないな”と思いました。こういったインパクトの強いCMは、苦情が入りやすいことが企業側もわかっているので、ここ最近はあまり見かけませんでした。そのため余計に気持ち悪いと受け取られたのではないかと思います。

 しかし、その一方で“面白い”とも思いました。“やんちゃなCMがあるな”と。今はネット上で情報や感情が共有され、それが時には“企業いじめ”や“商品潰し”につながる状況があります。そのため企業側は視聴者の目を気にして慎重になり、結果、地味になったというか、挑戦的なCMが減ってきている。視聴者側に“こういうのがCMなんだ”という『枠』、すなわち固定観念があり、それに収まった当たり障りのない、小さくまとまった映像になっているような気がします。その『枠』を見事に破壊したのが今回の『doda X』。“人の顔というのはCMにおいて大体これぐらいの大きさだろう”という視聴者側の固定観念を大きく覆すことになった。炎上狙い、話題作りの要素が強かったのではないかと思いますが、その意味ではすごく成功しているCMともいえますね」

 転職サイトは今、非常に増えている。

「企業側として非常に多くのサイトの中から思い出してもらうということが重要となります。良かれ悪しかれ、選択肢にあがらなければ選ばれることもない。不快に思われたり、苦情が入ったりしても、それは失敗ではない。そこから商品が買われないとなると問題にはなりますが、今回は転職サイトのCMです。CMへの不快感と自分の転職をつなげるかというと、“CMが気持ち悪いからやめておこう”とは、おそらくならないでしょう」

 不快感を乗り越え、ハイクラスな転職を実現した人はいかほどか。