毎日長蛇の列に近隣住民も驚きの声

 撮影で使用されたカフェにも行ってみると、平日の寒い日にもかかわらず、2時間待ちの大行列。並んでいた女性に話を聞いたところ、

「北海道から来ました。昨日はディズニーランドへ行ったんですが、今日はここに来ようと決めていました。“めめ”と同じ空気が吸いたくって! カフェが予約を受け付けてなかったので、並ぶ覚悟で1日予定を空けて来ました」

 現在このカフェではドラマの撮影で使った“silent席”のみ期間限定で予約を受け付けており、普段は予約を断っているよう。近隣住民に話を聞くと──。

「あまり人の多い通りでもないし、最初は何事かとビックリしました。週末はもっと人が多くて、オープン前から夕方までずっと行列が絶えないの。50人くらいは待ってるんじゃないかな。店員さんもすごく気さくでいい方たちだし、犬を連れてOKのカフェだったから、昔は散歩中にフラッと寄ったりもしたけど……最近は全然入れないのよね」

 よくカフェを訪れる常連だったが、今はなかなか行けず寂しいという。別の近隣住民に聞くと、

「きちんと列になって、歩道の端で並んでいるんだけど、たまに周りに気を使わず記念撮影している人たちがいて。店の前が坂道だから、自転車で勢いよく走ってくる人と衝突しそうになって危なかったこともあるね」

 危うく事故が起こりそうな現場を目撃したという。

 昨年12月25日、小田急線下北沢駅南西口広場には『silent』の白いクリスマスツリーが登場。

 同時期、TOKYO MXで放送されていたアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』も最終回を迎え、舞台だった下北沢には多くの人が聖地巡礼で訪れたが、それに対して下北沢にある老舗ライブハウスがツイッターで注意喚起を促したことも。

 前出の衣輪氏も聖地巡礼は諸刃の剣だという。

「フィルムコミッションなどのサービスはまだ過渡期で、地元住民の協力が得られないようなケースはあります。聖地巡礼は作品の応援にもつながるし、地域や店舗を応援することにもつながります。ですが、近隣に住んでいる方にとっては日常の場であることを忘れてはいけません」

 地元の方に配慮しながら、迷惑行為にならないように聖地巡礼を楽しみたい。

衣輪晋一(きぬわ・しんいち)●メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト「ORICON NEWS」など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中