「渡辺容疑者らは、フィリピン国内で告訴中であれば強制送還されないという制度を逆手に取って、フィリピン人の元妻に自身を訴えるように依頼しましたが、虚偽の告訴としてマニラの裁判所で棄却され、今回の強制送還となりました」(前出・スポーツ紙記者)

 最後まで強制送還に抵抗し続けていた渡辺容疑者だが、「かつては日本への帰国を模索していた時期もあった」と語るのは、犯罪に関する記事を多数執筆するフリージャーナリストのAさんだ。

関係者に「帰国させてほしい」と泣きついた

「'21年4月ごろ、私のSNSに渡辺が“フィリピンの収容所に長きにわたって拘束されて困っている。警察や外務省に働きかけて自分を帰国させてほしい”と訴えてきたのです。私のSNSプロフィールには犯罪に関する記事の実績が書かれているので、公的機関とのやりとりもできると踏んで頼ったのでしょう」

 Aさんはテレグラムを介して渡辺容疑者からそれまでの経緯を聞いたという。

「本人が言うには渡辺容疑者は36人ほどの特殊詐欺グループの一員だったようです。彼らは'18年ごろからフィリピンの廃ホテルの一室を拠点にしてオレオレ詐欺を行っていたのですが、'19年11月にフィリピン警察によって摘発。その際、大半が日本へ移送されることに決まったのですが、フィリピン警察から“まず、現地に妻子がいない者を送還”といわれ、妻帯者だった渡辺容疑者はとりあえず収容所に送られることになったようです」(Aさん、以下同)

 その後、日本へ送還を行う予定もあったが、'20年に入ってから新型コロナウイルスの影響で渡航制限が発令。渡辺容疑者の送還も思うように進まなくなり1年以上が経過、Aさんを頼るに至ったようだ。

「オレオレ詐欺を行うには、親族役、警察官役など頭数が必要ですが、摘発によってチームは瓦解。渡辺容疑者はこれまでどおり稼げなくなったと語っていました。また、当時コロナは未知のウイルスでしたから、衛生的に劣悪な環境である収容所に居続ければ自身の命が危ないとも考えたようですね。日本に帰国すれば逮捕は確実ですから、相当の覚悟だったのでしょう」