Aさんのスマホに残されていた渡辺容疑者とのトーク画面。名前の欄にはルフィと表記されている
Aさんのスマホに残されていた渡辺容疑者とのトーク画面。名前の欄にはルフィと表記されている
【写真】容疑者らの身体には至るところに刺青がびっしりと…

 Aさんは渡辺容疑者の要求どおり、日本の警察や外務省に事情を説明し送還を促すも、信用されなかったのか取り合ってもらえず。'21年の9月ごろには渡辺容疑者とも連絡が取れなくなったそうだ。

 Aさんはすでに自動削除され、やりとりがない渡辺容疑者とのテレグラムのトーク画面を記者に見せながら、複雑な胸中を語る。

「報道で渡辺やルフィという名前が出てきて驚きました。今はもう見られませんが、当時の彼のテレグラムのアイコンは『ONE PIECE』のルフィでしたからね。1年半前は“帰りたい”と泣き言を口にしていた詐欺グループの一兵卒が、まさか強盗組織のリーダーに成り上がっていたとは……。私が連絡を取れなくなった'21年の9月は、強盗事件が始まったとされる時期とほぼ同じ。そのころの渡辺容疑者は、帰国を諦めて、強盗の指示役としてやっていこうと考えていたと思います」

 Aさんは渡辺が詐欺から強盗にシフトチェンジした理由をこのように推察する。

同じリスクなら“強盗”のほうが割がいい

詐欺グループの上層部が次々と日本に送還されて、渡辺容疑者自身の収容所内での立場が相対的に強くなったのでしょう。そのうえで、大人数で電話をかける必要もなく、詐欺で使用していた個人情報リストを活用できる手段として強盗を考えたのだと思います。さらに言えば、オレオレ詐欺は、数年前までは捕まっても2年くらいで出所できましたが、最近はどんどん刑期が延びて5年前後もざら。対して強盗の刑期も同じく5年ほど。同じリスクなら、確実性の高い強盗のほうが割がいいと考えたんでしょう」

 世間を震撼させた広域強盗事件。その背景には詐欺師の身勝手な野心があった。