【この世の果て('94年)】誰も幸せにならずドン引き

『101回目のプロポーズ』と同じ野島伸司脚本による作品で、フジテレビ系月9枠で放送された。

 出演者が演じるキャラクターが健全だった『101回~』とは打って変わって、こちらは登場人物のほぼ全員がえげつないほどの闇を背負っている。

『この世の果て』('94年)。主題歌も大ヒット(左から豊川悦司、鈴木保奈美、三上博史)
『この世の果て』('94年)。主題歌も大ヒット(左から豊川悦司、鈴木保奈美、三上博史)
【写真】当時の写真で振り返る!90年代「粘着系ドラマ」出演者たち

 幼いころ自宅に放火して父を亡くし、妹を失明させた過去を持つ、まりあ(鈴木保奈美)。そんなまりあに交通事故に遭ったところを助けられ、彼女を愛するも覚醒剤中毒になり、身を落としていく士郎(三上博)。

 そして家庭環境から愛を信じられずにいたがまりあに惹かれていく征司(豊川悦司)。士郎への愛を貫くために征司との結婚式で、まりあはヘリコプターから海に飛び込む。

「誰も幸せにならない結末に今の視聴者はドン引きすると思います。まりあが寝たきりになるというラストは当時でも“???”しかありませんでした。

 繊細な士郎よりも、圧倒的に良い男に思えた征司を選ばないまりあに“そうじゃないだろう!”と激しく脱力したのを、今でもありありと覚えています」

 残酷な運命をキャラに負わせるのが脚本家、野島伸司さんの十八番だったが。

「そんな不幸なストーリーを楽しんでいた'90年代という時代に、とてつもない距離を感じます」

【想い出にかわるまで('90年)】絶滅危惧種の恋敵に白ける

 '80年代に『金妻ブーム』を巻き起こしたTBS系の金10枠。そこで放送されて一大ブームを巻き起こした『想い出にかわるまで』は、内館牧子氏が脚本を担当した話題作。

 主人公の恋敵を設定するのは、恋愛ドラマを作るうえでの王道だが─。

「今でも多くのドラマで“ライバル”や“当て馬”キャラが登場しますが、敵役が赤の他人ゆえ、波乱といっても安心して見られるレベルですよね」

『想い出にかわるまで』('90年)は姉が妹に婚約者を奪われる展開が話題に(左から松下由樹、石田純一、今井美樹)
『想い出にかわるまで』('90年)は姉が妹に婚約者を奪われる展開が話題に(左から松下由樹、石田純一、今井美樹)

『想い出に~』では、ヒロイン・るり子(今井美樹)の婚約者を奪って結婚してしまうライバルが実の妹・久美子(松下由樹)。生涯縁を切れない妹が恋敵という、地獄のような展開により、当時の今井美樹ブームをさらに加速させるほどこのドラマはヒットした。

「別れてもお互いへの気持ちが抑えられないるり子と直也(石田純一)が愛を確かめ合う場面では“良かったね!”と泣き、久美子が“あの人を取らないで!”とるり子に懇願するシーンでは、私を含め日本中の女たちが“どの口が!”とツッコんだものです。恋敵の背景も大切に描く今のドラマでは、ただただ嫌われるだけの久美子のようなキャラクターは存在しえない

 令和では絶滅危惧種の恋敵だ。