「治療できていることも幸せ」

 4度のがんを経験していま思うこととは――。

明るめの髪色のウィッグ姿の古村比呂さん。療養中とは思えないほど肌つやもよく若々しい!
明るめの髪色のウィッグ姿の古村比呂さん。療養中とは思えないほど肌つやもよく若々しい!
【写真】療養中とは思えないほど肌つやもよく若々しい、ウィッグ姿の古村比呂さん

「10年前、46歳で告知を受けたときは、がんのことを全く知らなかったので“もう死ぬんだ”とショックを受けました。でもこの10年でがんの治療は速すぎるくらい進歩しています。

 “がんと闘う”というより治療しながら仕事をして日常を送っていく、そういう時代が来ていると思います。

 私の場合、完治が難しい状況なのは、受け止めたくないけれど現実です。だからこそ、“拳を上げてがんと闘う”というのではなく、うまくがんと共存していこうっていう向き合い方がぴったりきていて。“がん細胞さん、ちょっといい子にしててね、よろしく”ってくらいの感じが私の中ではラクなんですね、すごく」

 治療中で感染症のリスクが高いため、気軽に外出できないことや人と会えないことがツラい、と古村さん。でも、「生きていること、過ごせていることが幸せ。治療できていることも幸せです」とも語る。“いまを楽しく生きたい”という願いとともに、ライフワークにされているがんの啓もう活動も続けていきたいと話す。

がんは誰でもなる可能性のある病気ですから。もし自分がなったらというシミュレーションは大切です。知っているのと知らないのとではコワさの度合いも違いますし、コワいと耳をふさいでしまって、結果、後悔することもあります。最良の治療のこと、お金や保険のことなど予備知識をしっかり入れておくと、病気になったときに全然違うので、そういった情報はこれからも発信していきたいです」

 この先、治療がお休みできて、コロナの不安がぬぐえたら、できれば今年中に全国を回ってサバイバーさんやリンパ浮腫の方と、直に気持ちをシェアしたいという。特に、がんの啓発に話が及ぶと、「少しでも多くの人にいろいろな知識をもってもらいたい!」となによりも熱く語る。

 4度のがんサバイバーとして、全国を飛び回る日々が1日でも早く訪れる日を願っている。

『手放す瞬間子宮頸がん、リンパ浮腫と共に歩んだ私の10年』(KADOKAWA)著=古村比呂、人見知りだった幼少期から、最初のがんを発症してからの10年の日々をまとめた。※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
古村比呂(こむら・ひろ)●1965年北海道生まれ。'87年、NHK朝の連続テレビ小説『チョッちゃん』のヒロインに抜擢され、その後もドラマや舞台で活躍。3児の母。'12年に子宮頸がんが発覚、術後はリンパ浮腫を発症する。5年後の'17年3月にがんが再発、同年11月に再々発。抗がん剤治療を経て'19年より経過観察中だったが、'23年1月に再々再発。