ただ補うだけでなく「とり方」にも工夫を

 メンタルの不調を癒し、うつ病のリスクを下げる食材を効率的に摂取できるメニューとして、オススメなのが玄米や雑穀米におみそ汁、魚や野菜を多く使った伝統的な和食メニューだ。

 実際、野菜や果物、大豆製品、きのこ、緑茶を摂取する健康的な日本型の食事スタイルの傾向が高い人は、肉や卵、パンや菓子類を多く摂取する欧米型の食事スタイルの人よりもうつ症状が少ないという研究データもあるという。

「理想は、『タシテヨ食材』を使った昔ながらの和食メニューの食生活。でも忙しい毎日の中で、すべての料理を自分で用意するとなれば、それだけで気が重くなり、心の負担となってしまいます。

 まずは毎日の食事に『タシテヨ食材』をプラスする、もしくは置き換えるというところから取り組みましょう」

 例えば、忙しい中で手軽に済ませたいランチなどは、パスタやカレー、うどんなど、いわゆる一品メニューを選ぶことも多いはず。そんな時に少量の市販品でもいいのでサラダをプラスすれば、不足しがちな食物繊維を簡単に補うことができる。

 また、毎日食べている白米を雑穀米や玄米に、食パンを全粒粉が入ったものやシリアルに替えるのも効果的。

「ポイントはなるべく自然の素材をとるようにすること。食品は加工すればするほど、心にも身体にも良い影響を与えないことがわかっています。

 とはいえ、加工品を一切とらないというのは難しい面がありますので、その分、野菜や大豆製品などを意識してとるようにするようにしてください」

 同時に、心に良い食材・栄養素をただ補うだけでなく、そのとり方にも気を配りたいもの。

 大切なのは、食物繊維だけ、タンパク質だけ……など、特定の栄養素を重点的に補うのではなく、それぞれの栄養素をバランス良く摂取すること。そして、食事量も朝はしっかり、夜は控えめにするのがベスト。

 また、食事をとることで体内時計がリセットされ、活動モードに切り替わるため、朝ごはんは必ず食べよう。

「例えば同じタンパク質でも、朝に摂取すれば、その後の日常活動で筋肉を使いますから、しっかりと筋肉となってくれます。でも夜は食べても後は寝るだけなのでエネルギー源として貯蔵されてしまいます。

 また、夜食べすぎると肥満に直結し、肥満によってうつ状態が悪化することもわかっているので、夜の食事は控えめに」

 毎日の食事は、できる限り誰かと一緒にとりたい。1人で食事をしていると、どうしても食べる速度が速くなる、スマホやテレビなどを見ながらよく噛まずに食事を続けてしまう可能性も。

家族や友人とごはんを食べると、「自然なカウンセリングの効果も期待できます」(功刀先生)※画像はイメージです
家族や友人とごはんを食べると、「自然なカウンセリングの効果も期待できます」(功刀先生)※画像はイメージです
【写真】手軽にできる“うつ抜け”!置き換えるだけでOKな食材

「よく噛んで食べることは消化吸収を助け、効率的な栄養摂取につながるだけでなく、噛むことで脳の血行が促され、環境や記憶に関わる海馬や前頭葉が活性化するなど脳の健康にも好ましいことがわかっています。

 また、ゆっくり味わって食べることで、血糖値の急上昇を防ぐこともできるので、糖尿病や肥満のリスクを減らすこともできるのです」

 1人で食事をとる場合は、できる限りゆっくり、ひと口あたり30回はしっかりと噛むようにしたい。