名前が出てこない記憶の彼方の作品

 一般のファンにも話を聞いた。SMAP結成前から木村拓哉を追い続け、ファン歴30年を超えるというKさん(50代)は、爆死だったと思う作品に『空から降る一億の星』を挙げる。

 明石家さんまとの共演が話題となったサスペンスで、関西地区では最高視聴率30%超え。一般的にはヒット作品として知られるが……。

「話はともかく、井川遥の演技がひどかった。木村くんに恋する令嬢役でしたが、木村くんの演技まで下手に見えるからやめて!という感じでした。別の役者さんだったらよかったのにと今でも思います」

 木村拓哉ドラマにおいて、ヒロインの存在は不可欠。共演女優との相性の悪さが作品のよしあしを決めることも。

『月の恋人〜Moon Lovers〜』('10年・フジテレビ系)では、木村拓哉の相手役を台湾人女優のリン・チーリンが演じたが、彼女の身長は174cm。並んだときに、木村拓哉の二枚目感が薄まってしまうという事態に。

 前出の『エンジン』でヒロインを演じた小雪も170cmの高身長であるため、「同様の悲劇が起きていた」とKさんは語る。

「そういう意味で『ラブジェネレーション』('97年・フジテレビ系)の松たか子はビジュアルや雰囲気の相性がよかったですよね。『HERO』シリーズが成功したのもうなずけます」(Kさん)

 また、ファンの間では、爆死作品として『安堂ロイド』('13年・TBS系)の名前がよく挙がるという。この作品で木村拓哉が演じたのは、未来からやってきたアンドロイド。あまりにも荒唐無稽な設定ゆえに、当時もネットでは辛辣な意見が目立ったが、意外にもKさんは好きな作品だそう。

ドラマとして新しいなと思ったんですよね。これまで見たことのない木村くんを見ることができたので、私は面白かったです」(Kさん)

 かなつさんも『安堂ロイド』は悪くないと話す。

「ぶっ飛んでいてよかったですよ。ああいう挑戦的な作品は、記憶に残りますよね」(かなつさん)

 その言葉どおり、記憶に残る作品はまだ救いがある。名前さえ挙がらない作品こそ爆死といえるのかもしれない。

「『MR.BRAIN』('09年・TBS系)や『A LIFE〜愛しき人〜』('17年・TBS系)は、タイトルを聞いても内容がはっきりと思い出せない。パンチがなかったのかも」(沖さん)

『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』('00年・TBS系)や『HERO』('01年・フジテレビ系)のような、大ヒットと呼べる作品に長らく出会えなかった木村拓哉だが、『グランメゾン★東京』('19年・TBS系)で、ようやく息を吹き返したのでは、とかなつさんは言う。

「鈴木京香さんや沢村一樹さんなど、脇を実力のある中堅俳優で固めたのがよかったですね。キャラクターやストーリーも面白く、やっと昔のキムタクが戻ってきたなと思いました」(かなつさん)