政治家の心得を知り、広い見識を持つ岩田さんに、「政治家になろうと思ったことはないのですか?」と尋ねてみた。

「政治家に“なる”ということは考えたこともありません。政治家を“見る”こととは違いますから。私はウォッチし続けたい。それに、たすきをかけて勢いよく壇上に駆け上がり、『私にお任せください!』なんてとても言えません(笑)」

母の介護の日常を包み隠さず伝えたい

 環境がガラリと変わり、「ようやくフリーランスという立場にも慣れてきた」と岩田さん。冒頭のように、現在は母親の介護にも奮闘する。

「毎日が失敗と反省の連続です。母親は、家事を完璧にこなす全力投球の主婦だっただけに、身の回りのことができなくなったことに苦しんでいるようです。そんな母と向き合うことに、はじめは戸惑い、葛藤もありました。

 ですが、年を取る現実を身をもって私に教えてくれているのだと、最近は思えるようになりました。

 自分が介護で感じたことを包み隠さず伝えることで、高齢社会を生きていくための参考になれば……と言っても、私は全然できていないかもしれないけど(笑)」

 そう謙遜する岩田さんだが、彼女の口から語られるキャリアや介護といった50代のリアルは、きっと多くの人に響くはずだ。

岩田明子(いわた・あきこ)●千葉県船橋市出身。東京大学法学部卒。1996年、NHKに入局。'02年、当時官房副長官だった安倍晋三元首相の番記者を担当し、以来、20年以上にわたって安倍元首相を取材。'22年7月、NHKを退局。ジャーナリストとして情報番組に出演したり、執筆活動をするなど、多方面で活動中。趣味は昭和歌謡。

(取材・文/我妻弘崇)