コロナ禍で、帰国を余儀なくされる。アパートを引き払い、2020年3月に帰国。

「コロナ禍で仕事も全部キャンセルになって、名古屋の実家に帰りました。外にも出られず、1日12時間くらい毎日ゲームばかりしていましたね」

「いちいち傷つくのはやめよう」

 実は彼女、ゲーム界ではその名を知られるゲーマーで、韓国在住時はゲーム実況者としても活躍。ゲーム配信で「月に数万円くらいですが、お小遣い程度は稼げるようになりました」というからかなりの腕前のよう。

 さらに帰国後はYouTubeチャンネル『kayokayo』をスタート。韓国コスメの紹介にスキンケア法、トランスジェンダーのリアルまで、さまざまな情報を発信している。そこでまたファン層が変わってきたという。

「もともとファンの大半が男性でしたけど、YouTubeは女性視聴者が8割を占めています。韓国のメイクや美容など、同じことに興味を持つ女性とつながっていけたらという裏テーマが自分の中にありました。だから女性ファンが増えたのは本当にうれしくて」

 ファンの期待に応えるべく、月に一度は韓国を訪れ、最新流行をキャッチする。

「韓国の流行の移り変わりって本当に早くて、今度は2週間行く予定。韓国に行くと必ず立ち寄るのがOLIVE YOUNG。韓国のマツキヨといわれるお店で、いつもコスメをどっさり買い込んでます(笑)」

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 弱い自分を変えようと、30歳で日本を飛び出したときに気づいたことがある。

「海外はトランスジェンダーに対する理解が進んでいるといわれるけれど、実際に行くとどこの国でもトランスジェンダーということで私を嫌う人はたくさんいました。だけどやっぱり自分がトランスジェンダーであるという事実は変えられないんですよね。だったらもう、いちいち傷つくのはやめようと決めました」

 世界を見て目が開かれた。トランスジェンダーとしての自身の意識も大きく変わった。

「人から嫌われないようにすることばかり考えていたけど、まず自分自身を出してみようと思えるようになった。そこからどんどん変わって、今はトランスジェンダーである自分に自信が持てるようになりました。私自身の経験が、年齢や性差に関係なく、行き詰まっている人のちょっとした息抜きになればすごくうれしい。こういう生き方もあるんだ、というひとつのメッセージになればいいなと思っています」


取材・文/小野寺悦子