病院側の意向もあり、手術をする病院名は明かしていない。手術に向けては慎重に準備を進めた。手術時間は8~10時間、術前に1週間ほど入院し、術後の入院は順調なら2週間、長くなれば1か月ほどかかるといわれているそう。

「抗がん剤の副作用がだんだんひどくなっているのも、手術を決めた理由のひとつです。手脚のしびれが今は結構強くて、ペンを持っても字が書きにくくなりましたし、ピアスのキャッチを入れるのに苦労するようになりました。髪は残っているものの、結構抜けていてウィッグ3つでおしゃれを楽しんでいます。それに抗がん剤の副作用が出ている時期はずっとだるく、以前より食べられないことが増えました。最近は少しよくなってきましたが味覚障害もあって、食いしん坊の私にはちょっと辛いですね」(みずきさん)

 たとえ手術をしても抗がん剤治療は続くかもしれないが、量が減ったりと治療のフェーズが変わる可能性もある。

「どちらかというと手術そのものより、そのあとにご飯が普通に食べられるようになるかが不安です。手術自体は先生にお任せするしかないので、考えてもしかたがないかなって思っています」(みずきさん)

 手術を報告する動画を公開したあと、実際にこの手術を経験した人から、今は健康でお酒も飲めるようになったという声ももらっている。

「医師からも、みずきはほかのすい臓がん患者と比べて若いので、もしかしたら術後に服薬が必要ないぐらいの状態になれる可能性はあると言われています。みずきは食べるのが好きなので、時間がかかるかもしれませんが、今までと同じ量とまではいかなくても好きなものを食べられるようになることを願っています」(こうへいさん)

今も「詐病だ」といった心無いコメントが寄せられる

 みずきさんの信じられないような劇的な回復から、今でも「詐病だ」といった心無いコメントが寄せられることはまだあるという。

がんが嘘だったらいいと思っているのは僕たちのほう。それは今でも思っています。最近では、現役がん治療医でYouTuberの押川勝太郎先生などにもセカンドオピニオンとして実際に診断書を診てもらい、ご意見をもらう動画も配信しました。せめて、ネット記事などを見て僕たちを知った方に『詐病ではないよ』ということをお伝えできればと思っています」(こうへいさん)

 動画内で押川先生が話しているが、人間は最初に知ったことに縛られる「アンカリング」という心理傾向があるという。つまり、「すい臓がんステージ4=治らない、元気なはずがない」という考えに縛られてしまうのだ。

「手術をする先生もおっしゃっていますが、すい臓がんの患者さんのほとんどは60歳以上なので、32歳のみずきとは体力も違います。がんサバイバーの皆さんからもよくコメントをいただきますが経過は本当に人それぞれでした。同じすい臓がんでもそうなので、もっと『がんは人それぞれ違う』なんだということが広まるといいですね。それに、みずきは“治らない”という考えに縛られず、いつも前向きでいたことが回復の力になったのでは僕は思っています」(こうへいさん)