母親が守ってくれた命の使い道

 JINさんが服役している間に裁判は決着を迎え、主犯である堀慶末は死刑、ほか2人には無期懲役が言い渡された。

「裁判の中でも真実はわかりませんでした。裁判で決まったことが真実ってことなんだろうけど、それで納得できるほど僕は大人じゃないので」

 堀の供述には矛盾点が多数ある。例えばJINさんのお母さんの殺害についてだ。共犯2人は「堀から殺害を指示された」と話しているが、堀は「2人が勝手にやったことで自分は関与していない」と言っている。これ以外にも、食い違いはいくつかある。

本当の真実を知りたい。どうやって俺の両親は殺されたのか、どうして俺の両親は殺されたのか、どうして俺の、俺たちの人生はめちゃくちゃにされないといけなかったのか。1度だけ、堀から手紙が送られてきたことがあるんですが、そこにも真実は書かれていませんでした。ただ謝罪の文章が並んでいるだけだった

 また、堀からの手紙には「受刑中である現在行うべきこととして、作業報奨金を被害弁償に充てていこうと考えておりまして、まずはこれまで貯めた報奨金をせめてもの償いの形としてお送りしたいと思っております。(中略)今後も毎月とは行きませんが、精一杯のお気持ちをお届けできればと考えております」と記載されていた。

 JINさんは、お金が送られてきてもそれを使うことはないと伝えた上で送金を許可したが、作業報奨金が送られてくることはなかったという。

堀慶末がJINさんへ送った手紙。これ以降手紙が送られてくることはなかった(1/4)
堀慶末がJINさんへ送った手紙。これ以降手紙が送られてくることはなかった(1/4)
【写真】主犯から送られてきた謝罪文、JINさんが母の命日に衝動で書いた絵

「堀はいまでも金にしがみついているみたいです。僕の両親もたった6万円のために殺害されたし、堀が犯したほかの事件もすべて金目当て。死刑確定後に国家賠償もしています。シスターとの手紙のやり取りを拘置所に不許可にされたとかで、国に33万円を請求。結局3万3000円が支払われました。法律に文句を言うつもりはないけど、俺らの遺産は守ってくれなかったのになんで堀への賠償金は支払うの? とは思ってしまう

 JINさんは薄く笑ってこう続けた。

「でも、僕だって金のためにたくさん罪を犯したし、たくさんの人を傷つけてきた。僕と堀が同じだとはまったく思わないけど、金に目が眩んだっていう点においては近いのかもって怖くなったりもします」

 だからこそ、JINさんには目指すものがある。

「不良少年や少女に対してなにかしたいなって思っています。大人になってから変わるのってめちゃくちゃ難しいんですよ。身をもってそれを痛感してるから、なにかを抱えて非行に走ってしまっている子やそのご両親のサポートをしたいと思っています。俺の人生は母が絞め殺されながら命をかけて守ってくれたものです。めちゃくちゃにされたままでは終われない」