詐欺の疑いで逮捕された三菱UFJ信託銀行の元嘱託社員・吉田美江容疑者(『テレ朝news』より)
詐欺の疑いで逮捕された三菱UFJ信託銀行の元嘱託社員・吉田美江容疑者(『テレ朝news』より)
【写真】14人から約1億円を着服、顧客からの信頼も厚かった吉田美江容疑者

銀行には、現金をお客様宅にお届けするサービスがあるのですが、吉田容疑者はそのサービスの隙を狙って犯行に及んでいた。お客様からの訴えがなければ、判明する可能性は限りなく低い。だから13年間も続けられたのです。まさか本人もバレるとは思っていなかったと思います」(前出・女性職員、以下同)

 銀行員は、大口の顧客相手には、その自宅へと訪問をし、顧客の要望を聞いたり、資産運用の状況を説明したりする。吉田容疑者は、顧客と2人きりになる、その“密室”の機会を利用していたのだ。

ひとり身の高齢者を狙った手口

「私どもがお客様のご自宅を訪問している中で、新たな投資商品を購入いただくときなど、さまざまな書類に記入していただきます。その際、お客様が深く確認をせず“あとは書いておいて”などと言い、書類に金額などを記入せずハンコを押して担当者に渡すことがある。本来、特段の事情がない限り、あってはいけないことなのですが……。お客様の自宅で行われることですから、確認は難しい。吉田容疑者は、そうやって入手した払戻請求書を使い“顧客の依頼で自宅に現金を届けます”と言って、事務員から受け取った現金を懐に入れていた

 とはいえ、自身の資産が減少していれば、すぐにわかりそうなものだが。

吉田容疑者が主なターゲットとしていたのは、ご高齢のお客様でした。具体的には、死別したなどの理由でご親族がいなかったり、その関係性が希薄だったりするひとり身の高齢者。ひとり身であれば確認する人もいませんし、お客様の中には認知症が進んでいる人も……。調査では、お客様の遠縁の親族に連絡をして確認いただいたところ、吉田容疑者の犯行が発覚した事例もあるようです」

 高齢のひとり暮らしともなれば、話し相手が欲しいときもあるだろう。吉田容疑者は、そうした心のスキマに付け込み食い物にしていた。

「定期的に訪問する職員を信頼しきって資産の管理を一任する顧客も当然います。吉田容疑者は、新入社員向けに投資商品の講師をするぐらいの人でしたから、お客様から“減っていないか”と聞かれても、“偽り”の説明をして安心させることは難しくなかったはず。全幅の信頼を置いていたお客様も多かったのでは。今回の事案は、その信頼を利用した悪質な犯行なのです」

 こうした吉田容疑者の手口について、前出の広報室の担当者に改めて確認した。