ケアハラしないためにも利用者側は契約書の確認を

「介護サービスを開始するときには、最初にケアマネジャーが、利用者やその家族と契約を交わします。事業所によっては、『乱暴な発言や暴力、迷惑なセクハラ、パワハラと思われる言動があった場合は、サービスプランを中止させていただく場合もあります』といった内容が契約書に書いてあるところも」

 ホームヘルパーの仕事は、主に「身体介助」「生活援助」「通院時の乗車・降車などの介助」と決められている。

 その中で、利用者側が誤解しやすいのは「生活援助」だ。これには食事の準備や掃除、洗濯、ゴミ出し、日用品の買い物代行、服の補修、部屋の片づけなど、日常生活のサポートが多く含まれる。

「そのサービスを超えた仕事を頼みたいという場合は、介護保険外なので別料金で自由契約を結ぶ必要があります」

 事業所によっては『ケアプランで規定されたもの以外は行いません』という場合もあるが、ケアマネジャーに相談すれば介護保険外のサービス提供をしてくれる事業所を探すことも可能だ。

「契約書をよく読むように伝えても、『わかった、わかった』と聞き流してしまう利用者やその家族が多いんです」

 高齢者や障害者になれば同じ自宅でも、まったくの健康体のときとは違う危険がある。

「特にご家族には高齢の親を自宅で、他人にケアしてもらうということはどういうことか、契約するときによく理解してほしいのです。不測の事態が起こったとき、それらをホームヘルパーのせいにしてしまっては信頼関係を築くのは難しくなります」

 一方で、ホームヘルパー側にもケアハラの知識が不十分だと高口さんは苦言を呈す。

「事業所でもハラスメント対策が義務付けられており、社内に相談窓口があるのですが、実はあまり活用されていません。

 上司に報告すれば組織として対応することは可能なのですが、なかなか相談しない。それに、ケアハラの相談窓口は自治体にもあります」

 非正規のヘルパーは、ケアハラを訴えて仕事が減ると困ると考える人もいるが、今はヘルパー不足なので、対応してくれる事業所も多いという。

「ケアハラの境界線は利用者との関係によるので、曖昧であるのは事実です。仲が良ければ『やってあげる』のが苦ではないことも。ただ、ヘルパー自身が嫌だ、怖いと感じたら、毅然たる態度でその場で断っていい。そこは難しく考えないでいいと思います」