体験し続けている世代と歴史として認識する世代

 双方を比較して、最も大きな“ズレ”が生じていたのは「ちゃぶ台」に対するイメージ。昭和生まれでは19位にランクインしており「どの家庭にもあった」(52歳・女性)「家族そろってちゃぶ台を囲んでごはんを食べた。一家団らんを思い出す」(66歳・男性)など、ノスタルジーに浸るアイテムのひとつとなっている。

「懐かしさだけでなく、昭和世代の人の中には『ちゃぶ台が現役で使われている』と思っている人もいるかもしれません。そうすると、上位には入りませんよね」(八幡さん)

 一方、ちゃぶ台が5位にランクインした平成世代からは「現代の家にはない家具だから」(30歳・女性)という失われた昭和の遺産としてのイメージに加えて「ちゃぶ台をひっくり返すのが昭和の男という感じがする」(33歳・女性)「『巨人の星』の星一徹がちゃぶ台をひっくり返していた」(26歳・男性)などの声が多く寄せられた。漫画やテレビ番組の影響で“父親がひっくり返すもの”として認識されているようだ。ただ「祖父がよくひっくり返していた」(34歳・女性)「父親が怒ったときにひっくり返していた」(64歳・男性)という声もあるので、あながち間違ったイメージではないのかも?

 そして、平成世代から「エモい」(21歳・女性)というコメントを引き出したのが、平成生まれ第9位の「カセットテープ、ラジカセ」。昭和生まれのランキングでは3位に入り「カセットテープでテレビの音楽を録音したり、中学のころには自分の声を録音したりして楽しかった」(62歳・女性)「ラジオを聴いて、好きな曲をラジカセで録音していた」(61歳・女性)「青春時代の思い出」(41歳・男性)など、あのころを思い出すアイテムとして、多くの票を集めた。

 興味深いのは、平成世代のコメント。平成中期以降に生まれた人々からは「昭和ならではの代物だと思う」(19歳・女性)という声が多かったが、’90年代前半に生まれたアラサー世代に目を向けると「CDを買ってカセットテープに録音して聴いていた」(32歳・女性)「好きな曲を集めて自分だけのカセットテープを作っていた。何度も聴きすぎてテープが伸びて音割れする感覚は、今の子にはわからないと思う」(34歳・女性)など、昭和生まれと近しい思い出を持つ人も多い。

 実は近年、山下達郎やスピッツなど、あえてカセットテープで楽曲を発売するアーティストもおり、一部の音楽愛好家の間では注目を集める音楽メディアでもある。カセットテープはひょっとすると、昭和平成・令和と時代を股にかける稀有な存在になるかもしれない。

カセットテープ
カセットテープ

 八幡さんは、このランキング結果を受けて「平成生まれの人は“昭和”を歴史上の世界と認識しているのでは」と考察する。

昭和世代にとっては自分たちが生きてきた時代ですが、平成生まれは教科書でしか昭和を知りません。彼らの多くが『戦争』を選んでいるのが象徴的で、実際に戦争を経験した人に会った経験はなく、学校の授業で学んだことなんです。それが、現在の世代間の認識のズレとして表れているのではないでしょうか」

 あなたにとって、昭和はどんな時代ですか?

八幡和郎(やわた・かずお)●評論家、歴史作家、徳島文理大学教授。1951年、滋賀県大津市出身。東京大学法学部を卒業後、1975年通商産業(現・経済産業)省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。『民族と国家の5000年史』(育鵬社)など著書多数

(取材・文/とみたまゆり)