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ー ミス香港コンテストは、今や女優への“最高の登竜門”

 香港の夏の風物詩である「(ミス香港コンテスト(香港小姐競選)」の決勝戦が8月27日に行われた。優勝は、香港大学に在学中の21歳の学生。香港大学は東京大学をも凌ぐ名門で、同コンテストで香港大学の学生が優勝したのは史上初。まさに才貌両全といえよう。また特筆すべきは、1972年から51年連続で毎年実施されてきた国民的コンテストで、史上初めてとなる“AI司会者”が登場したという点だ。

「歴代の優勝者のデータを用いて、AIが生成したキャラクターが司会をするという試みでした。これは日本だったら、NHK紅白歌合戦の司会にAIが加わるようなものです。AIの導入と活用では、香港を含む中華圏は日本の何周も先を走っています」とは、中華圏の経済や文化に詳しいエコノミストの田代秀敏氏。続けて、

過去の50回のコンテストにおける歴代のミス香港の上位3名のデータをAIに学習させ、“理想的なミス香港”を生成し、それとの“相似比”が算出され表示されました。さらに、AIが出場者の60歳になった時のキャラクターを生成し、そのキャラクターが出場者に質問し、それにどのように答えるのかも、審査対象とされました。美貌だけでなく、知性と教養も求められています。AIが生成した出場者の60歳になった時のキャラクターが、少々地味すぎたのは何とも不思議でしたが……

自身が60歳になった時のキャラクターをAIが生成。それとの対話も審査対象とされた
自身が60歳になった時のキャラクターをAIが生成。それとの対話も審査対象とされた

ミス香港コンテストは、今や女優への“最高の登竜門”

 優勝は、莊子セン(王へんに旋)さん。

「コンテストでのトークでは持ち前の知性の高さを示し、見事優勝。受賞の挨拶では《大学の勉強で毎日AIを活用しています》と美しい笑顔で話していました。優勝決定後は、前年のミス香港が彼女を抱きしめて祝福し、たすきを掛け、ティアラをかぶせ、クリスタルの盾を手渡し、ミス香港の地位を受け継がせます。香港で最も輝かしい瞬間です」(田代氏、以下同)

 優勝した莊子センさんの他にも、トップレベルの大学の学生・院生がめじろ押しで、全体として高学歴化している傾向にあるという。

 ミス香港の上位3名は、香港のあらゆる公式イベントや国際イベントに登場し、香港市民を代表して挨拶し、公式の香港の顔となる。日本のミスコンとは一線を画す、国をあげての一大コンテンツだ。

実はかつてのミス香港コンテストは、貧しい家庭の娘が10代から飲食店や宝石店で働き、人生の一発逆転を懸けて望む。そんな機会の場でした。例えば、1979年のミス香港コンテストに出場したチェリー・チェンは義務教育を終えたらすぐに宝石店で働き、当時19歳でミス香港コンテストに挑戦しました。第4位で選外でしたが、主催のテレビ局にスカウトされ、1980年代の香港映画を代表する大女優になりました。まさに香港ドリームの体現者です。ミス香港コンテストは、今や女優への最高の登竜門なのです

 日本でもこんなコンテストが生まれる日が来る?