7つの企業に取材、対応さまざま

 テレビ局が変わらない中で、企業は番組スポンサーについてどう対応するのか。CM起用を取りやめると発表した7つの企業に取材した。

 勝木社長が強いメッセージを発したアサヒグループホールディングスは、グループ会社のアサヒビールが関ジャニ∞の村上信五(41)がMCを務める『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)やTOKIOが出演する『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)の番組スポンサーを務めている。

 番組スポンサーの対応については現在スポンサーを務める番組や、今後の新番組も含め「(アサヒグループの)人権方針に基づいて、番組ごとに個別に丁寧に検討を進めている段階です」と回答した。

 ジャニーズタレントの広告起用の取りやめと同様の方針で判断をするとしたのが、『第一三共ヘルスケア』だ。ジャニーズ出演番組ではアサヒグループホールディングスと同じく『月曜から夜ふかし』の番組スポンサーを務めている。

 第一三共ヘルスケアの広報は「先日の(ジャニーズ事務所の)記者会見の内容を踏まえ、十分な対応が取られるまで、タレントを起用した広告やプロモーションの実施を見送り、新たな契約や契約の更新についても行わない」と企業としての方針を説明した上で、番組スポンサーについても「この方針に即して判断いたします」とした。

 現状では対応について答えられないとしたのが『日産自動車株式会社』、『キリンホールディングス』、『日本マクドナルド株式会社』の3社だ。

 日産は「現時点でお答えできる内容については、所属タレントを起用した新たな販促物等は展開しませんというもののみで、番組のスポンサー等については今はお答えできない状況です」と回答を控えた。キリンも「現時点で決まったことはありません」とした。

 日本マクドナルドも具体的な回答は控える一方、「当社は、人権を尊重した行動をとることを求めた『サプライヤー行動規範』を制定しており、サプライヤーに対しても、当該基準の遵守を求めております」とし、それをテレビ局や番組にも求めるかとの問いに対しては「大枠では含まれております」とした。

 番組スポンサーの対応について、これまでと変わらないと回答したのが『日本航空株式会社』だ。

「タレントを使うか、使わないかという企画に関してはテレビ局が行うものですので、協賛する可能性はあります」(日本航空の広報)

 また『東京海上日動』は「ジャニーズ事務所に関連した報道に関わらず、10月以降のテレビ番組について、スポンサーとしてのレギュラー提供自体を実施しない予定となっていました」とジャニーズの会見以前から、テレビの番組スポンサーを行わない予定だったと明かした。

 民放テレビ局にとって番組スポンサーは生命線で、その影響力は大きい。

 11日にNHKで放送された『クローズアップ現代』のジャニーズの性加害特集に出演した、情報番組、ニュース番組のディレクターやプロデューサーを務めた元フジテレビの吉野嘉高氏は、ジャニー喜多川氏の性加害がメディアに報道されなかった理由として、番組スポンサーへの配慮があったと明かしている。

「ジャニーズに触れないということです。触ると大ごとになる可能性があるから、やり過ごした方がいいと最初に言われた。CMに出ているタレントさんも多いですから、営業とかスポンサーさんとか、ジャニーズ関連のものは全てアンタッチャブルにしていくと」(11日放送の『クローズアップ現代』から)

 ジャニーズ事務所は13日、公式サイトを通じ、被害補償及び再発防止策について発表し、

「弊社は失った信頼を回復できるように全力を注ぐととともに、今後1年間、広告出演並びに番組出演等で頂く出演料は全てタレント本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬は頂きません」

 としたが、ジャニーズという社名を変更しないことや、藤島ジュリー景子元社長が株式を100%を持ったままであることなどから不十分であるという声もある。果たして企業側はどのような対応にでるのだろうか。

 メディアの沈黙もあり、ジャニーズ性加害問題はBBCという“外圧”がなければ闇に葬られていた。そしてジャニーズの謝罪会見が行われた後も、テレビ局は何とか現状を維持しようとしている。根っからの忖度体質を変えるためには、CM起用中止だけでなく、スポンサー企業のテレビ局へのプレッシャーが鍵を握る。

(取材・文/徳重龍徳)

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)/ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku