遺伝性のがんは決して少なくない

 がん・感染症センター都立駒込病院の有賀智之先生は、

遺伝性乳がん卵巣がん症候群は、BRCA1遺伝子、あるいはBRCA2遺伝子という、私たちの誰もが持っている遺伝子に生まれつき変化がある状態をいいます。この遺伝子の変化は性別に関係なく、およそ50パーセントの確率で親から子に引き継がれます」

 と話す。

 患者数は少なくなく、全人口の500人に1人の割合でいるとされる。

「この遺伝子変化がある人は乳がんと卵巣がんを発症するリスクが高く、特に20~30代といった比較的若い年齢で発症する場合があります。また、両方の乳房にがんができやすい、男性の乳がん発症のリスクが高くなる、などといった特徴もあります」(有賀先生、以下同)

 先月、男性デュオ『バブルガム・ブラザーズ』のブラザー・コーン(67)が男性乳がんであることを公表したが、遺伝性の可能性もあるという。

 さらに、2019年には人気料理家、栗原はるみさんの娘で、自身も料理家の栗原友さんが、遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断され、がんが見つかった左胸だけでなく右胸の乳房も切除。

 卵巣がん発症リスクに備えて卵巣と卵管を摘出したと報じられた。決して珍しくないのだ。

 また遺伝性のがんは、遺伝性乳がん卵巣がん症候群だけではない。大腸がんと子宮体がんに主に影響が及ぶ「リンチ症候群」という遺伝性のがんもある。

 細かくいうと他にもあるが、その2つの症候群が遺伝性のがんの大半を占めるという。リンチ症候群に詳しい埼玉医科大学総合医療センターの石田秀行先生に話を聞いた。

「発がんを抑える遺伝子が変化する病気で、男性は大腸がん女性は大腸がんと子宮体がんになりやすくなります。遺伝子の変化がない人に比べて、大腸がんの発症リスクは約10倍、子宮体がんの発症リスクは約20倍高くなるとされているので要注意です」(石田先生、以下同)

 ところが、リンチ症候群も遺伝性乳がん卵巣がん症候群も、自分がそうだと気がついていない人が多いという。なぜなのか。