番組では説明不足な点も

ウツボは魚や小型のエビ、カニ、タコなどを食べるといわれています。伊勢えびも食べると思いますが、主に数cm程度の小さいもので、漁獲されるサイズは、ほとんど食べないと考えられています。理由として、伊勢えびの天敵にマダコがいますが、そのマダコをウツボが食べるので、伊勢えびが身を守るためにウツボと同所的に生息し、ウツボも伊勢えびを襲わずに共生しているとされています

 伊勢えびは減少して、ウツボは増加しているのか。

「三重県のウツボの漁獲量は調べられていないため、増減はよくわかっていません。ウツボは漁獲した後の処理に手間がかかるので、獲る漁師さんが減ってウツボが増えているということはあるかもしれません」(松田教授、以下同)

 ただ、ウツボがまったく関係ないわけではないそう。

「伊勢えび漁は海底に網を張り、絡めとる“刺し網漁”で行われています。そこにウツボがかかると網が傷つき、使えなくなるため、ウツボを駆除する地区もあります」

 磯焼けが漁獲量減少の大きな要因になっているのか。

伊勢えびの数が急に減っているのは水温上昇のために、海藻が減少してきていることが大きく関係しています。番組ではウツボが強調されていましたが、説明不足な点もあるように思えました

 これまで実直に自然と向き合ってきただけに“過剰演出”でガッカリさせることはあってほしくないものだ。

松田浩一 三重大学水産実験所教授。水産生物学、水産増殖学を専攻しており、主に磯に生息している生き物の生態や安定的に漁獲量を確保するための研究をしている