長年山に携わる人間の“熊よけ対策”

熊はしつこかったものの、ちょっと噛みついてすぐに去ったという(YouTubeチャンネルより)
熊はしつこかったものの、ちょっと噛みついてすぐに去ったという(YouTubeチャンネルより)
【写真】「太ももと腕を負傷しました」熊に対して木の棒で立ち向かう“衝撃”の一部始終

 襲ってきた熊のその後について聞くと、

「捕まえられてないですよ。頭がいいので、そう簡単には捕まらないし追跡自体がむずかしい。連続で人が襲われた場合は非常に危険なので、罠(ドラム缶や鉄わな)を仕掛けたりして猟友会が仕留めることはあります」

 実は『原生林の熊』さんは25年ほど山で活動をしているにもかかわらず、熊とのニアミスは今回含めてわずか3回。長年山の仕事に携わる人間ならではの“熊よけ対策”もあるという。

「大きな音が良いと言われていますが、50メートル先まで遠くまで響くような強力な音を発するものでないとあまり意味ないんですよね。だから私は、むしろクマの気配を聞き逃さないように、ラジオなどは使わないようにしています。あとは、急に後ろから突撃をやられないように吠える犬を連れて歩くことは大事です」

 今回の経験を教訓に、対策グッズをいくつか購入したという。

「今回はたまたま木の棒があって助かったので、攻撃用に『どっとこ』(とびぐちの巨大版、160センチくらいのもの)も購入しました。あとはサイレンと、風向きによっては意味ないけどスプレーですね」

熊との遭遇“3パターン”

 ほかにも昨今の熊事情や岩手県の現状についても聞いてみた。

『原生林の熊』さんによると、熊の遭遇パターン・対策は主に3つあるという。

まずクマが単体だった場合。一つ目は我々人間が山の中に入り遭遇するパターンです。この場合は、大抵クマの方が逃げることが多いです。

 二つ目はクマが餌を求めて民家の近くに来たパターン。食い気が勝っていて、普通の精神状態じゃないので、絶対に近づいてはダメです。あとは、人や作物を守るために本来放牧で使われる『電気牧柵』をクマ対策に使う家も増えてきました。

 最後は場所問わず子連れのクマの場合。これが1番危険で、私の場合このパターンでした。母熊のスイッチが入る距離に入る前に距離を取るのがベストで、犬がいれば、犬がクマに吠えて対峙している間に人間は逃げるのも有効です。このとき、クマとの距離を取りながら吠えるタイプの犬が最適。あと犬に首輪をつけているとクマの爪が引っかかって犬がけがをしてしまうので、はじめから首輪は取っておくといいです