激しい嘔吐と下痢で「便器が足りない」

 家庭内に感染者がいなくても、職場や駅など、他者と共同で使うトイレの利用で、知らない間に感染してしまう可能性もある。症状は、前触れなく突然現れるのが特徴だ。

「ウイルスに感染してから早いと18時間、だいたい24~48時間の間で症状が現れます。初めは腹痛や嘔吐が突然起こり、そのあとに下痢、発熱やだるさが出始めます。

 特に嘔吐と下痢は激しく、下から便が出ている間に上から吐き気が襲うため、患者さんの中には『便器が足りない』という人もいます」

トイレは感染拡大の原因になりやすい場所。嘔吐したら流す前にフタを閉めよう ※写真はイメージです
トイレは感染拡大の原因になりやすい場所。嘔吐したら流す前にフタを閉めよう ※写真はイメージです
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 しんどいので感染が疑われる多くの人が医療機関を受診するが、実はノロウイルスの感染症検査には制限がある。

「健康保険で検査ができるのは、重症化リスクの高い3歳未満か65歳以上、その他はがんなどの重症化リスクがある人のみ。健康な成人の場合は検査による確定診断は行われず、『おそらくノロウイルスでしょう』と診断が出ます。

 治療としては吐き気止めや整腸剤が処方され、経口補水液など十分な水分を取って休養していただきます」

 症状は3日程度で治まるのが一般的だが、水様便があるとウイルスの排出は続く。

「人にうつさないためにも、外出するのは便の状態が良くなってからが望ましいです。罹(かか)ると下痢や嘔吐が激しく、水分を取れない、取っても出てしまうのがノロウイルスの特徴。

 そのため脱水になりやすく、腎不全になって入院という重症化パターンもあり得ます。特に高齢者や子どもは感染しないように十分気をつけたほうがいい」

 また、ノロウイルスに限らずこうした感染症には“罹りやすい人”がいるのも事実だ。

「ノロウイルスに何回も罹る人たちは、細胞にある受容体の関係でウイルスが身体に入ってきやすいタイプと考えられています。反対に、なぜか全然罹らない人もいますが、そのときの個人の免疫や体調によるところも大きいです」

 農林水産省も体調が悪いときは特に、二枚貝を生で食べるのは避けるよう警鐘を鳴らしている。