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ー “繊細”な一面も広まったことでリバイバルブームに
尾崎豊

《盗んだバイクで走り出す》

 誰もが知っている名曲『15の夜』のワンフレーズ。“若者のカリスマ”“10代の教祖”などと形容されてきた、伝説のミュージシャン・尾崎豊が12月1日に、デビュー40周年を迎える。

“繊細”な一面も広まったことでリバイバルブームに

 '83年に『15の夜』でデビューした彼は、若者ならではの葛藤する気持ちを表現。多くの共感を得てきたが、'92年、26歳という若さで天国に旅立った。

 どれだけ時間がたっても、色あせることはない尾崎。リアルタイムの彼を知らない、20〜30代の間でも人気を集めて、リバイバルブームが起こっている。

 そんな、いつの時代も新しい尾崎豊の音楽の魅力を、音楽ライターの宮本英夫さんに尋ねた。

「実は、デビュー当初は尾崎さんを好きな人とそうでない人がはっきり分かれていたんです。彼は“孤高の存在”であると同時に、クセの強い人でもありました。だから当時は、彼の音楽以前に、キャラクターを見て食わず嫌いしている人もいました。

 ただ、今は先に音楽を知る人がほとんど。だからこそ、本当の意味で音楽の本質を“シンプル”に、評価することができているんだと思います

 尾崎の登場は、煌びやかな衣装に身を包んだり、ダンスのような大きな動きを披露する、それまでの“エンターテイナー”的なロックのイメージを変えた。

高校生がロックでCDデビューというだけで、かなり衝撃的。それに加えて、決して派手ではない等身大の“普通”の高校生が反抗的な気持ちを吐き出した“魂のこもった”音楽を作っているのが新鮮でした。

 世の中をまだ知らない若者ゆえの迫力とパワーがあって、同じ思いを抱えて悶々としていた、若い男子たちは彼に夢中になっていましたね」

 時代を超えて、多くの人に刺さる秘密は、尾崎の音楽のストレートさだという。

彼の音楽は本当に真っすぐで、伝えたいことがいつも明確。例えば『I LOVE YO
U』という楽曲では、タイトルでもある“I LOVE YOU”が1行目にきています。

 誰ひとり誤解することなく心にスッと入ってくる“わかりやすさ”や“純粋さ”は現在活躍する若いミュージシャンたちも注目しているようです。それが、尾崎さんが再評価されている理由のひとつではないでしょうか

 ただ、時を経て、尾崎へのイメージが変わっているという。

「当時の尾崎さんは、社会に反抗する、頑固で強気なイメージが強かったです。一方で今は、尾崎さんのラブソングを宇多田ヒカルさんなどがカバーして有名になっていることもあり、“繊細”な尾崎さんの一面も広まっているようです」

 いつになっても走り続ける尾崎。真っすぐな気持ちは、どんな曲でも変わらない。