普段の僕の日常とそんなに変わらない

 本作には、ろう者の演者も多数起用されている。

「ひとつの大きな挑戦であり、新しい試み。ろう者の方とお芝居することは初めてでした。ろう者の俳優さんはもちろん、演技経験のないろう者の方もいて刺激的でしたね。

 もちろん、ろう者だけではないんですが、そんな空気感や熱量によって僕の中からあふれ出てきたものはあると思います。ろう者の方や先生と一緒の時間が過ごせて、仲良くもなれたし。そんな体験は本当に楽しかったなと思います」

 そんなろうコミュニティーにふれて学んだことについて聞くと、

「うーん、ないですね。なんというか、ろう者の方々と関わることはそんなに特別なものじゃなくて。

 手話はもちろん難しくて、練習しないとできなかったんですけど、でも、普段の僕の日常とそんなに変わることもなくて。なので、楽しかったというのが感想です!!」

僕の作品はなかなか見てくれない(笑)

 コーダとしての苦しみを抱えながら成長した尚人は、いつしか手話と距離を置くように。警察に勤め、結婚もするが、共にうまくはいかず……。

 ハローワークで特技を問われ、“手話ならできます”と、声を絞り出したことをきっかけに、手話通訳士としての道に歩み出す。

 ある日、“裁判法廷でのろう者の通訳”の依頼を受ける。 ろう者が起こした過去と現在の2つの事件が次第に複雑に絡み合っていき……。

「最初に“手話を扱った作品”と聞いたときには、ヒューマンで感動的な感じなのかなと思ったんですが、ミステリーだったんですよね。逆にそれが面白いなと思ったし、いいなと思いました」

 コーダやろう者の存在や個性が事件のポイントに。通常の謎解きとはやや異なる点も新鮮だ。

「そのあたりのストーリーの面白さも楽しんでもらいたいですね。そして家族愛。ネタバレになるから言えない部分もあるんですが、いろんな家族の愛が描かれていて。

 すごく胸にくるものがあったり、最後には少しふわっと花が咲くような温かさがあったりもします」