カトリック修道会が組織ぐるみで隠蔽

 田中さんはまず長崎大司教区人権相談室に神父の性加害を訴え、その後、神父が所属する神言修道会に抗議を行った。修道会は神父の罪を認め、「聖職停止令」を交付。その理由は次のように明記されていた。

性犯罪を行い、貞潔の誓願を破ったと告発されていること

・彼の司祭としての行動は信者の間に嫌悪感を抱かせたこと

・将来スキャンダルを引き起こす可能性があること

 修道会は神父に100万円を渡して母国・チリに帰国させ、3年間カウンセリングを受けさせるという指導を行った。

 しかし田中さんに大きな衝撃をもたらしたのが、その神父が再来日し、日本人の女性信者と結婚し、還俗して日本国内で生活していたという事実だ。修道会はそのことを知っていたにもかかわらず、田中さんには「チリに帰国したままだ」と伝えていたという。

「すぐに日本に戻ってきていたなんて、罪の意識があるとは思えません。修道会も私が受けた苦痛をまったく理解せず、神父の逃亡を手助けしていたのだと失望しました」

 修道会は一度は神父の罪を認めながらも、朝日新聞の取材には「神父は性行為を否定していた」と回答している。さらに田中さんのことを「精神科に通っていて妄想がある」と書いた文書を神父たちに配るといった行為もしていた。

 田中さんの代理人である秋田一惠弁護士は「神父は告解を利用して彼女の重大な秘密を知り、それに乗じて性加害を繰り返した。修道会は性被害の事実と加害者を組織的に隠蔽している」と非難している。

 田中さんは、被害時の画像や動画が流出することを恐れており、受け渡しを求めているが、修道会から対処の連絡はない。現在も抑うつ状態が慢性的に続いており、精神科医のサポートを受けているが、苦しい日々を送っている。