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ー 宣伝効果が高い「3000万人都市」

 大谷が、『ロサンゼルス・エンゼルス』から『ロサンゼルス・ドジャース』へと移籍したのは、'23年12月のこと。今年2月にスタートしたメジャーリーグのオープン戦を、テレビで視聴した人たちが注目したのは、

「試合の中継で、捕手やバッターの後ろにあるバックネット下に日系企業の広告がよく出ているんです。特にペットフードの製造販売をする『いなば食品』のネコ用おやつ『チャオちゅ~る』の海外向け商品の看板がSNSでも話題になっていました」(スポーツ紙記者)

 だが、海外で行われるメジャーリーグの試合に、日本企業が広告を出して効果はあるのか。

宣伝効果が高い「3000万人都市」

 '08年にエンゼルスとスポンサー契約を締結し、'15年からバックネット下などに広告出稿をするヤクルトは、その効果を実感している。

「'22年に全米で1日当たりに売れたヤクルトの本数は63万2000本で、この数字は前年比で112・3%となっています。今年はエンゼルスタジアムにも、ドジャースタジアムにも広告出稿をしていく予定です」(ヤクルト広報)

 同社は'21年、『FLASH』の取材に対して、'20年は1日当たり46万3000本が現地で売れたと回答。広告による影響がすべてではないにせよ、そこから約20万本近く増加しているのだから、広告効果はあるはずだ。

会見時の大谷翔平(ドジャース公式インスタグラムより)
会見時の大谷翔平(ドジャース公式インスタグラムより)

 スターの移籍に伴い、ドジャースとスポンサー契約を結ぶ企業が続いている。

「自動車タイヤや自動車部品の製造販売を行う『TOYO TIRE』の100%子会社は、ドジャースと5年間のスポンサー契約を。『いなば食品』も、3年間のスポンサー契約を結んでいますね。ドジャースの場合は、5年のスポンサー契約で年間10億円から12億円ほどの価格設定です」(広告代理店関係者)

 高額な広告料は、名門チーム・ドジャースだからこそだと、野球文化學曾会長で、米球界にも詳しい名城大学准教授の鈴村裕輔氏が話す。

「ドジャースと同じカリフォルニア州にあるエンゼルスの拠点があるアナハイムは、例えるならば仙台や札幌のような地方都市。その一方、ドジャースが拠点を持つロサンゼルスは東京都のイメージです。州の中心地であるロサンゼルスは、3000万人規模の巨大マーケットがあるため、宣伝効果も高く、強気の価格設定ができるのです」

 とある経済誌の編集者は、日本では誰もが知る“あの企業”が、その巨大マーケットを狙っていると話す。

「100円ショップでおなじみの『DAISO』は、中長期戦略としてアメリカ市場の開拓を掲げています。現在は100店舗ほどですが、'30年までにはアメリカ国内で1000店舗を目指している。すでにドジャースのオープン戦で『DAISO』の広告が話題になっており、大型のスポンサー契約をしている可能性は十分にあります」

 大谷と共に100円ショップの飛躍なるか!?

鈴村裕輔 名城大学外国語学部准教授。主な専門は比較思想、政治史、文化研究。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、野球文化學會会長、アメリカ野球学会会員