横山英幸大阪市長(大阪市公式サイトより)
横山英幸大阪市長(大阪市公式サイトより)
【写真】対応が疑問視される横山大阪市長

 大阪市のJR福島駅は1日の乗車人員約2万7千人だが、ちょうど喫煙所「空白地帯」にある。同駅付近の住民によると、

「路上喫煙が多いのは以前からですが、吸い殻のポイ捨てがひどいです。4月に飲食店が禁煙になってからは今度は夜の路上喫煙者が増えました」

 それだけではない。先に、大阪府受動喫煙防止条例の完全施行で客席面積100平方メートル以下、30平方メートル超の店も原則屋内禁煙になったと述べたが、これによって新たに4000店舗ほどが原則屋内禁煙の対象になったと見られている。

飲食店への助成制度は煩雑な上、踏み込みが不十分

 もちろん、飲食店が全面禁煙化、あるいは喫煙専用室を設置する際の補助金制度はあった。

 とりわけ「喫煙専用室設置」の場合は上限額300万円に対する一部補助があるが、国の助成100万円と合わせたものなので、大阪府としては最大125万円しか補助をしない。

「ただし、補助率は4分の3で飲食店の持ち出しがある上、手続きも国の審査に通った後、さらに府に申請が必要で、府のプロセスも約3か月はかかるという煩雑さで、2024年度単体で575件の飲食店が利用意思を表明したものの、同年度内に対策がなされたのは半分以下の211件だったそうです」(同府政担当記者)

 喫煙者や煙を気にしない人を相手に商売している飲食店にとっては死活問題だ。在阪テレビ局の報道では、条例を見据え店内を禁煙にした店では売上が3割減ったという例もあるという。また、専用室を設置するにしても客席をつぶさなければならないケースも多々だ。

 飲食店から閉め出されたスモーカーは当然屋外に喫煙所を求めるわけだが、屋外喫煙所の整備補助も十分なものではない。

「大阪府は、2025年4月1日から公衆喫煙所を設置する民間事業者に対する補助制度を新設しました。新たに喫煙所を整備する場合は、屋内喫煙所1施設当たり300万円、屋外喫煙所1施設当たり700万円を上限として設置経費の50%を助成するというもの。こちらについても一見踏み込んだ助成に見えますが、“ランニングコストや賃料の補助はないのでわざわざ喫煙所にするメリットがないのではないか”という声がありました」(同府政担当記者)

 確かに、東京都千代田区の「公衆喫煙所設置助成事業」では、新規の設置経費については700万円を上限に、5年経過後の更新経費として300万円を上限(いずれも助成率100%)に助成金を出すだけでなく、設置後も賃料または賃料相当額の10割と諸経費の8割を合わせて年間264万円を上限に補助するというもの。賃料まで出すということで、店舗の一部を喫煙所に改装するという自営業者も出てきているのではないか。そちらに比べると踏み込みが足りないという印象は否めない。

 そんな中、大阪市の1月27日の路上喫煙全面禁止以後、“破綻”する分煙事情を象徴するような「陳情」が市民から上がり、3月21日、大阪市議会が紛糾する場面があった。後編では、その陳情についての市議会の質疑と、さらに深まった分煙問題について取り上げていきたい。