新刊『この味もまたいつか恋しくなる』の感想

L「新刊、読ませてもらいました。2日で読み切っちゃうほど、すごい浸透力の高いエッセイでした」
燃「ありがとう。以前、阿川佐和子さんと対談したとき、『自分が興味のない、例えば“レタス”っていうテーマでも、10本書けるのがプロ』って聞いたんだけど、今回一冊にまとめた『週刊女性』の連載は、まさにレタスでした」
L「レタスですか」
燃「僕はサッポロ一番のラーメンでも気がすんじゃう人間なのに、テーマが『食』で。こんな人間が、食にまつわることをどう料理して書くか、プロとして試されたように思います。でも、食をキーワードに人との思い出を描くことで僕らしさが出せたなぁと。エッセイなんだけど、短編小説のような作品に仕上がったと感じています」
L「燃え殻さんの書くものって『しゃべってる』ような温度感なんです。友達と『今日、こんなことがあったんだ』『えっ、マジ!』っていう、あの感じ。もともと本が苦手だった俺が、初めて読めたのが燃え殻さんの小説だったんですけど、コンビニのおにぎりみたいに身近な目線で書いてくれてるから、すーっと心に届くんですよね」
燃「僕自身、あまり本を読んでこなかったから、読みやすさは工夫してます。自分が書けない漢字はひらがなにしたり、音読してみて引っかかるところを直したり。できる限りノイズがない、ストレスを感じない状態で読んでもらえるように。今、TikTokとかエンタメがあふれてるけど、負けないくらいに面白くてサクッと読めて、読まなかった自分より、読んだ自分のほうがいいなと思えるものになればなって」
L「俺、ファンや友達に燃え殻さんの本をすすめるとき、この本のここが好きって具体的に言わないんです。人によって刺さる部分は違うから、先入観なしで読んでほしくて。俺自身、たまたま本屋で手に取って、真っ白な状態で読んで、燃え殻さんの本に影響を受けたので」
燃「親子みたいに年齢差あるけど、僕もLEO君にすごく影響を受けてる。最初に飲んだのは3年くらい前?」
L「BE:FIRSTを結成して、ファーストアルバムが出たばかりのころですね」
燃「LEO君、『東京ドームに立ちたい』って熱く夢を語ってたけど、僕は簡単じゃないだろうなって思ってた。夢で終わっちゃう人がほとんどだから。でも2年後、本当にドームに立ってた。僕がLEO君のすごさを感じるのは、夢を実現しただけでなく、メジャーになったことで取り巻く環境が激変したはずなのに、まったく変わらないところ。調子に乗ったり、偉ぶることもなく、意地でも変わらないの(笑)」
L「俺、今も普通に地元の友達と会ってるし、小、中学校のころ、野球部だったから、事務所でバット振ってます!」
燃「事務所で!?(笑)出会った当時、僕は小説がNetflixで映画化されたり、J―WAVEでラジオ番組を持ったり、驚くほどいい波が来て、有頂天になってた。法事の席で、意味もなく親戚のおじさんに自慢したり(笑)。もともとテレビの下請け会社で過酷に働いて、40過ぎて、たまたま物書きになった人間だからね。取り巻く環境が変わって、自分のテンションがわからなくなってたんです。そんなとき、LEO君と知り合って、一気にスターの階段を駆け上がっても、周りの人を大切にしながら、ブレずに自分の音楽をやっていく姿を目の当たりにして、スゲー勉強になったんだよなあ」
L「あくまでも人気があるのはBE:FIRSTの歌で、自分が人気者とか思ってないからですかね。BE:FIRSTに入って幸せな時間は増えたけど、それでも悩んだり、もがいたり、世の中のトーンが少し落ちて見えるときがあります。そんなとき、燃え殻さんの『運命は過去形がよく似合う』って言葉を思い出します。今、つらくても、その時間には意味があって、何年かたったら笑って話せる過去になる。俺、この言葉が大好きなんです」