粋な祖父を思い出す味

「今回の対談、テーマが『食』なんだけど、LEO君の思い出の味は?」

L「思い出の味ですか──、納豆卵かな」

「納豆卵?」

L「納豆に生卵を混ぜて、ご飯にかけるやつ。子どものころ、母方のじいちゃんが、遊びに行くたび、必ず作ってくれたんです」

「どんなおじいちゃんなの?」

L「すごく厳しかったですね。よく怒られたから。でも俺は、じいちゃんが大好きで、じいちゃんが好きなものは俺も好きになってました。野球もそうだし、焼き芋とか干し芋なんかも。今も、メンバーが『ハンバーガー食べたい』って言うとき、俺、『干し芋食べたいなあ』って思っちゃう」

「LEO君が干し芋かあ(笑)」

L「うちは両親が共働きだったので、俺が熱を出したときとか、じいちゃんが世話してくれたんです。子どもだからじっと寝ていられなくて。起き出すと、怒られて。じいちゃんが昼寝してる間に、こそっと遊んだり、トムとジェリーみたいでした。今はひ孫もいて、デレデレです。俺のときとずいぶん違うって文句言ったら、『おまえは言えばわかる子だから』って。なんか、そういう言葉を素直に受け取れるんですよね。俺の基盤になった人だと思います」

「LEO君のまっとうなおじいちゃんの話のあとでなんだけど、うちの父方の祖父は職業不定だったんです。もう亡くなってますけど」

L「そうなんすね」

「おばあちゃんが自宅で一杯飲み屋をやって生計を立てて、おじいちゃんは茶の間で野球見てるような人でね。子どものころ、『天ぷらうどん食いに行こう』って近所の店に連れてってもらったことがあるんだけど、食べながら『絶対誰にも言うなよ』って何度も念を押すわけ」

L「なんで秘密なんですか?」

「まったくわかんない(笑)。でも、そういう会話と一緒に、天ぷらうどんとじいちゃんが強烈に記憶に刻まれたりするんだよね。なぜかおしゃれで、僕と公園に行くときも、『どの帽子にするか』って、待ちくたびれるほどこだわったりして。いつだったか、喫茶店に入ったら、『あら』なんておじいちゃんと同年代の女の人が声をかけてきて、おじいちゃん『ああ』なんて手を軽くあげて照れてるの。子ども心に、怪しい!って思いましたね」

L「モテたんですね」

「そうだと思う。働かないし、やる気もないし、“ま、いっか”みたいなマインドで生きてるのに。でも、おばあちゃんは、おじいちゃんのことが好きで、僕も、ああなったらヤバいぞって思いながらも憧れてた」

L「なんか、わかる気がします」

「本の中で、駄菓子屋のおじさんが出てくるんだけど、その人を例に『立派な大人のフリがうまい人間と、うまくフリができない人間がいる』って話を書いたんだよね。僕を救ってくれたのも、立派な大人より、むしろ、おじいちゃんや駄菓子屋のおじさんみたいなダメな大人だった。

 僕、大槻ケンヂさんや中島らもさんの作品が好きで読んでたんだけど、ダサいところを見せられることで安心できたというか。『俺、こんなに偉いんだぞ』とかじゃなくて、『ゴメン、俺、この年になってもわかんない。おまえわかんなくても恥ずかしくないぞ』って言われてるようで。まねごとでもいいから、僕もそういう大人でありたいと思ってる節があるかも」

L「燃え殻さんと最初に会ったころ、実は俺、見えない壁にぶちあたってたんです。でも、話してるうちに、あ、こっちにドアがあるなって気づかせてもらえて。燃え殻さんが、立派な大人のフリをしなかったからだと思います」