乳がんの治療は、がんの進行度やタイプによって、手術、薬物療法(ホルモン療法や分子標的治療、抗がん薬など)、放射線療法などを組み合わせて行う。標準的な手術は、乳房部分切除術あるいは乳房全切除術のいずれか。

乳房部分切除の場合は生活を変える必要はない

 進行ステージが0、I、II期の乳がんの場合は、乳房温存療法(乳房部分切除術と放射線療法の両方)が標準的だ。乳房全切除術の場合は、病状によって希望すれば乳房再建を行うことができる。乳房再建には人工物を使う方法と、自分の腹部や背中の組織を移植する自家組織再建がある。

抗がん剤治療後、髪の毛が生えてきてウィッグをやめたころの唐澤先生
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 唐澤先生の場合は、進行ステージはIIで、手術の前に乳がんを小さくさせる目的で抗がん剤を使う「術前化学療法」を受けてから、乳房温存手術を実施。

 術前に使った抗がん剤の副作用で、白血球が減って大腸憩室炎になり下痢や腹痛、薬疹もひどく緊急入院となったが、一般的にはここまで重い副作用が出ることは少ないそうだ。

もともと薬に弱い体質なので副作用は予想していましたが、まずは標準治療を行って副作用に対処するのが正しいと思います。副作用については、検査所見などは医師がチェックできますが、患者さんは症状とその程度を医師に正しく伝えることが大切です

 乳房温存手術自体は、「数時間の比較的簡単な手術」で、入院せずに外来で行う医療施設もあるという。

私は水曜の午前中に仕事をして午後に入院、木曜に手術、土曜午前に退院。翌月曜には仕事に復帰して1日外来診療を行い、その日の夜に患者さん向けの講演会の講師をしました

 実質3日間の入院で、手術後の約半日を除き、病室でメール対応やパソコンでの書類作成など、普通に仕事をしていた唐澤先生。

特に乳房部分切除の場合は、直後に傷の痛みは多少はあるものの、退院後は体調変化もなく、生活を変える必要などありません。ただし、全摘出と腋窩郭清術をされた方は、退院後は重い荷物を持たないなどの注意を

 再発しないために留意しておきたいのは「標準的術後補助療法を受け、定期受診を欠かさないこと」だという。「標準的術後補助療法」とは、身体に潜んでいるがん細胞を根絶して、再発のリスクを減らし、改善するための手術後に行う治療のこと。