2024年、“師匠”中田翔と坊主頭に(秋広優人公式インスタグラムより)
2024年、“師匠”中田翔と坊主頭に(秋広優人公式インスタグラムより)
【写真】選手にはきびしくも家では優しいパパ、息子に野球指導する阿部監督

 この日はもう一つ、「トレード失敗」を思わせる象徴的なシーンもあった。

 12回裏、すでに巨人の勝利が消滅した中で、せめて引き分けに持ち込みたい巨人がマウンドに送ったのは、守護神のライデル・マルティネス投手(28)。ツーアウト二塁の一打サヨナラの場面を迎え、ソフトバンクベンチが動く。代打で登場したのは秋広だ。

 初球、2球目と低めに外れて2ボールになったところで巨人からタイムがかかり、杉内俊哉コーチ(44)がマウンドに向かう。秋広に対して投げにくそうにしていたマルティネスだけに、勝負を避けて「申告敬遠」になると思われた。

 ところが、岸田行倫捕手(28)は再び腰を下ろして構えると勝負続行の様子。結局、3球4球とスプリットが低めに外れてストレートの四球を与えた守護神だが、続く嶺井博希捕手(34)には打って変わってストライク先行で攻め、空振り三振に切ってゲームセット。

秋広と“勝負”後の阿部監督の表情

 結果、秋広との“勝負を避けた”ことが奏功して引き分けに持ち込んだ巨人。しかし、どこかギクシャクしたような采配に思えるが、在阪球団を中心に取材するスポーツライターの解説によると、

「この時、ソフトバンクベンチに残っていたのは捕手2人で、ともに嶺井選手に代わる打者とは考えにくい状況。一塁が空いていただけに、秋広選手の敬遠は首脳陣としても当初から選択肢にあったと思います。

 ただ初めから申告敬遠を申し出たら、“トレードに出した選手から逃げるのか”と。そして仮に秋広選手と勝負してサヨナラ打でお立ち台を演出しようものなら、あれこれと掻き立てられかねません。そこで四球やむなしで際どいコースに投げさせて、振ってくれたら儲け物との“勝負”と見ますね」

 一方、同ライターが気になったというのが、秋広を歩かせた後でテレビカメラに抜かれた、阿部監督の明らかに不満げな憮然とした表情。