日本人は「わかりやすい国民性」
例えば、これが中国で開かれたイベントで、“高級懐石”とうたった5000円の料理があったとしましょう。日本人が見ると、「まぁ、異国での懐石料理ならこの程度だよね」というような内容にもかかわらず、現地の人たちが「偽物だ!」と抗議していたら、「ちょっと落ち着けよ」と思いません? 楽しみにしていた人には気の毒ですが、“本物”はやっぱり本場に行ってナンボです。たくさんの人が来場するイベントで手軽に食べられるのですから、完璧なわけがないのです。
そもそも日本人は、とてもわかりやすい国民性の持ち主だと思われています。特に食べ物にうるさいし、性愛にストレートすぎる、と。同じく食べ物や性愛に興味を持ちすぎている人種としてイタリア人も挙げられていますね。双方とも食文化が発達し、性愛においては日本は性産業が盛んですし、イタリアといえば恋愛大国です。欧州やロシアなどは、本国で食料があまり手に入らなかったため植民地政策がとられたわけで、食に対してこだわりすぎるのは「みっともない」という考えもあります。また、多種多様な人たちの集まりですから、怒りを意思表示するにしても遠回しに表現することが多いです。オブラートに包んだ言い回しで嫌みを伝えてくる京都人を想像するとわかりやすいかもしれません。
ですから、あの万博のアフタヌーンティー騒動のように食べ物に文句をつけていると「日本人は元気やわぁ(うるさいなあ)」と言ってくるかもしれませんよ。

谷本真由美 たにもと・まゆみ 1975年、神奈川県生まれ。著述家。元国連職員。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。X上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いポストで人気を博す。著書に『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ(ワニブックス【PLUS】新書)など著書多数。
構成/我妻弘崇