今回の抗議活動で現地の日本人に影響は出ているのか。長年、アメリカで取材をする梅田香子さんに聞いた。
“トランプ大統領の頭脳”がドジャースをターゲットに
「デモをしているのはアメリカ市民権を持った人たちが多く、ビザを持たない移民の人たちは逮捕されたくないため、ほとんど参加していません。ロサンゼルスには多数の日本人の駐在員がいますが、道路の封鎖といった過激なデモが行われていることで、自分たちのビザも取り上げられないかと心配する人もいます」
一時に比べると落ち着きを見せているデモだが、移民を巡る対立にドジャースも巻き込まれることに。トランプ大統領の側近から“告発”されるという事態になっている。
「反移民論者として知られるスティーブン・ミラー大統領次席補佐官が設立に関わった保守系団体『アメリカ・ファースト・リーガル』は、ドジャースが差別的な雇用を行っているとして、アメリカ雇用機会均等委員会(EEOC)に調査を申し立てました。この団体は、ドジャースが“多様性”“公平性”“包括性”の英語表記の頭文字をとった『DEI』を推進する取り組みを装い、アジア人や中南米出身のラティーノ系選手など、特定の人種や民族のグループを優遇したと主張しています」(前出・在米ジャーナリスト、以下同)
“反白人主義”の雇用をしているとされたドジャース。これは報復的な意味合いも強そうだ。
「ドジャースは6月19日に“ICEの職員が球場の駐車場への立ち入りを求めたが、拒否した”とSNSで発表。それに対してICEは“虚偽だ。われわれはそこに行っていない”と否定しました。その翌日にドジャースはロサンゼルス市と協力して、移民取り締まりの影響を受けた家庭を支援するために100万ドル(約1億4700万円)を寄付すると発表。そうした移民への対応によって目をつけられたのかもしれません」
ラテン系をはじめ、アジア系など多くの移民が暮らすロサンゼルスに本拠地を置くドジャース。移民や雇用にどう向き合ってきたのか、前出の梅田さんが話す。
「ドジャースは初の黒人メジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソンを雇ったり、メキシコ出身のフェルナンド・バレンズエラが活躍して、ラテン系のファンを中心に一大ブームになるなど、移民や多様性に対してプライドを持っています。
ドジャースは伝統として、球団職員が自ら退職を申し出ない限りはクビを宣告することはほとんどないという珍しい球団。水原一平氏ほどの事件を起こさないと解雇にはなりません。現在も職員には中国系やラテン系の人が多いですが、市民権やビザを持っている人しか雇っていません」

共和党内で“トランプ大統領の頭脳”と称されるミラー氏が関わる団体が、ドジャースをターゲットにしたのはなぜなのか。
「トランプ大統領は現在2期目ですが、3期目はないといわれています。なので、ミラー氏は“ポスト・トランプ”の座を狙って、トランプ大統領のご機嫌を取りたいのだと思います。
ロサンゼルスのあるカリフォルニア州では民主党の地盤が強く、トランプ氏が所属する共和党は票が取れない。そのため、ロサンゼルスに本拠地を置き、昨年の優勝チームであるドジャースをターゲットにして話題をつくりたかったのでしょう。まず注目を集めるというのはトランプ大統領の手法と同じです」(梅田さん)