SNSでしか声をあげる手段がない

 今回SNSの告発投稿では、部員の保護者が実名を公表して、被害を訴えた。それが拡散されて、問題が明るみに出たものの、被害者家族に対する誹謗中傷のコメントも散見された。

 SNSによる誹謗中傷は、どんな罪になるのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に聞くと、

「SNSなどのインターネットによる誹謗中傷でも、名誉毀損や侮辱罪といった刑事責任を問われる可能性があります。誹謗中傷した投稿者を特定することを“発信者情報開示請求”といい、現在は手続きの時間が短縮されて、手続きの方法自体も簡単になるなど進歩しています」

 前出の末冨教授は、今回の騒動で浮き彫りになった問題点を力説する。

「被害者がSNSでしか声をあげる手段がなかった。広陵高校のいじめ事案に際し、高野連や広島県に相談できる、しかるべき窓口がなかったので、告発をする方法がSNSでの実名投稿しかないというところまで追い詰められていた。

 これは、わが国のいじめ防止対策推進法や“こども基本法”という法制における深刻な不備です。被害者が声をあげる方法がSNSしかなかったという点に注目をしてほしいです」

 SNSの炎上であぶり出された今回の暴力問題。適切な調査の先に高校野球における不祥事の根絶はあるのか。