自分の心を「波立たせないこと」
60歳を迎えた今、桜木さんはラクな状態で小説に向き合えているという。
「フィクションを書くためには自分の心を波立たせないことが大切で、若いころはそのための努力が必要でした。齢を重ねてよかったのは、波立たない状態がスタンダードになってきたこと。おばちゃんのメンタルはけっこう強いみたいです」
最後に、桜木さんと同世代も多い週女読者に向けてコメントをいただいた。
「60歳前後になると、いろいろありつつ少しラクになってきている年代ではないかと思います。お互い、背伸びせず卑下もせず、自分と楽しくつきあっていきましょう」
最近の桜木さん
「53歳の誕生日からアルトサックスを習っています。7年たってもいまだに下手ですが。先日、先生と一緒にカラオケボックスに行き、好きな曲を歌うようにサックスを吹いたんです。歌詞の色っぽさもあって、中村雅俊さんの『恋人も濡れる街角』は腕が足りないところをカバーできて、“けっこういいかも”って思いました(笑)」
今週の推し本
『情熱』桜木紫乃 集英社 税込み1815円
話題の本棚

小説『一橋桐子(79)の相談日記』原田ひ香 徳間書店 税込み1925円
老朽化した猿山団地には、管理人がおらず、誰が住んでいるのか、何人住んでいるのかもわからない始末。そんな団地の管理人として白羽の矢が立ったのが、クドオ・ワークスの清掃部チーフとなった79歳の一橋桐子。名簿作りから始めてみると、次々と“住人の闇”が見えてきた。テレビドラマ『一橋桐子の犯罪日記』原作の待望の続編。平均年齢60歳“高齢化団地”の山積みの問題を一橋桐子は解決できるか!?

旅『中央アジア紀行 ぐるり5か国60日』白石あづさ 辰巳出版 税込み2200円
2か月間の中央アジア縦断の旅で切り取った「今」を、一冊に凝縮。シルクロードが織りなす歴史と、急速な変化を遂げる現代が交錯する中央アジア全5か国(カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギス)。中央アジアの秘境から未来都市まで、その息をのむような美しさと人々のリアルな暮らしを、650枚を超えるカラー写真とともに、著者ならではの研ぎ澄まされた感性で映し出す。
取材・文/熊谷あづさ 写真/chihiro.