石川さんによると、実はシェーグレン症候群など、日頃の通院をきっかけに偶然、判明した病気も多い。

10年以上前、突然、手の指がパンパンに腫れたんですが、何科に行けばいいのかわからなくて。当時、B型肝炎の治療で通院していた病院の総合診療科を受診してやっとわかったんです

少しでも違和感があれば病院へ

 実はこのとき、最初のうち手のしびれや、指先が真っ白になる症状が現れていた。

あのときの症状が膠原病の症状のひとつだったと、あとでわかりました。当時はそんなこと全く知らなかったし、すぐに症状も治まったのでそのままにしておいたんです

27歳で母子感染によるB型肝炎を発症。40日間の入院ののち、1年間自宅療養をした 画像提供/SAZAE
27歳で母子感染によるB型肝炎を発症。40日間の入院ののち、1年間自宅療養をした 画像提供/SAZAE
【写真】B型肝炎を発症して40日も入院…20代の石川ひとみさん

 ほかにも、いくつかの偶然に救われた面は多い。

 人工股関節置換術のあとには、検査で血中カルシウム濃度が高くなっているのがわかり、内分泌内科の専門医に診察してもらったところ、副甲状腺の腫瘍が見つかっている。幸い、良性で数値も正常値に戻ったので、現在は経過観察中だ。

私の場合、たまたま通院や定期検査で病気に気づけましたが、年齢を重ねると、何か不調があっても加齢のせいにして我慢したり、放置しがち。でも、病気の可能性もあるし、原因がわかれば治療や対処ができます。少しでも変化や違和感があれば、悪化する前に病院に行ったほうがいいと思うんです

 石川さんの闘病の始まりは1987年、まだ27歳のとき。母子感染のキャリア(持続感染)で発症したB型肝炎だった。

 高校卒業後、名古屋から夢いっぱいで上京し1978年にデビュー。3年後『まちぶせ』で一躍人気アイドルに。そして初めてミュージカルの主演を務めることになった石川さんをB型肝炎が襲った。

 異常な倦怠感に疲労感、脱力感、無力感─。最初は自分の甘えだと思っていたが、ついにめまいで倒れ、病院で検査を受けて判明した。決まっていたミュージカルは降板。順風満帆だった石川さんは、たちまち絶望の底に突き落とされた。

 完治しない病気と闘う石川さんを支えたのは、周囲への「愛」と「感謝」だった。

最初は『なんで私が……』と病気を憎んだし、将来に希望なんて持てませんでした。でも、病気を機に、周囲に支えられている、助けられていることを改めて実感できたんです。自分だけの命ではないので、大事にしようと心に決めました。誤解を恐れずに言うと、B型肝炎の経験は、私の人生にとって貴重な出来事だったと思っています

 その後、偏見や差別に苦しんだ自身の経験を生かし、正しい知識を広めるための講演会を行うなど、積極的に活動する。

みんなに支えられている命ですから、私がやっていることが誰かのためになったり、勇気づけられたらうれしいですね。そのためにできる限りの努力はしていきたい

 石川さんが抱えている病気は、ほとんどが完治せず、一生付き合っていかなければいけないものばかり。20代の若さで大病を経験し、以後、さまざまな病と対峙してきたからこそ、病気とうまく付き合っていく方法を心得ている。

まずは病気を『ちゃんと受け入れる』ことが大切だと思います。自分に起きた現実を全部受け止めて、初めて消化できるようになると思っています