そんな石川さんは、自らを「模範患者」と言うほど、病気とまじめに向き合う。
「私はB型肝炎になったころから、200%まじめに治療に励んできました。薬の服用を忘れたことはないし、どうしたら身体をいちばん良い状態にできるのかいつも考えています」
何があっても前向きに
それほどまでに前向きになれる理由は“熱中できるもの”があるからだ。
「私は昔から歌が大好きで、少しでも多くステージに立ちたかった。歌うために、そして気持ち良く生きるために、何事も積極的な見方をするよう努力しています」
“生きる”を存分に楽しむ石川さんの目標は、「心の豊かさ」を磨くことだと教えてくれた。
「本当の『豊かさ』って、思いやりとか優しさ、そして現実を捉えられる心の広さだと思うんです。私に起こった病気は、望んだわけでも予期していたわけでもありません。人生が計画どおりにいくことなんてほとんどない。捉え方次第でプラスにもマイナスにもなります。だったら、何があっても前向きに考えていたほうがいいですよ」
長い間病気と闘い、数えきれない苦しみや悲しみと向き合ってきたからこそ、たどり着いた“本当の豊かさ”。石川さんのエネルギーに満ちた歌声は、今後も多くの人を励まし、勇気づけるだろう。
取材・文/オフィス三銃士(小山御耀子)
いしかわ・ひとみ 1959年、愛知県名古屋市生まれ。'78年に『右向け右』で歌手デビューし、3年後に大ヒット曲『まちぶせ』で『NHK紅白歌合戦』に初出場する。'87年にB型肝炎で入院。現在は歌手を中心に幅広い分野で活躍中。11月24日には毎年恒例の秋のコンサートが東京FMホールで開催される。